金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「おまえは私の言うことを聞かなくていい。好きなように描きなさい」:2018~2021年の今日に出会った言葉

(1)2021年2月20日
元来私はものを書くのがすきではないので……出てみるとそれが何と一字一句練ったよい文章だとか、いろいろ褒められたりするのです。やっつけ仕事ともいえるくらいの私の文章が人様からそんなにいわれると、私は顔から火が出るような恥ずかしさを感じました。自分として努力せずにやったことが、人から褒められるということはおそろしいことです。
幸田文「私は筆を断つ」『〆切本』p64)
『〆切本』は2回目。文章の達人たちによる「書けない苦しさ」を集めた文集ですが、幸田文さんは唯一の例外かも。やっつけ仕事が褒められて恥ずかしいというのは天才にしか達し得ない境地なのかも。

(2)2019年2月20日
あるとき、プラタナスの木を写生する図画の授業があったのだが、「葉っぱは光が当たっているところと、そうでないところで色が違うんだ、よく見て描きなさい」と教えてくれた。細かく描くのが好きな先生でした。
 でも僕は、先生の教えとは違う、ベタベタと塗りたくったような絵を描いた。怒られるかなと思いきや、逆に「おまえは私の言うことを聞かなくていい。好きなように描きなさい」と言ってくれたんです。
(画家 野見山暁治さん 「人生の贈り物」2019年2月20日朝日新聞

(2)2018年2月20日
論破禁止(高橋ゼミのルール) ・・・(中略)・・・誰かを論破しようとしている人間の顔つきは、自分の正しさに酔っているみたいで、すごく卑しい感じがするから。高橋源一郎(2018年2月19日付朝日新聞「折々のことば」より)

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