金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

『英文標準問題精講』の生かし方(こういうクラスがあったらいいな)

日々、『英文標準問題精講』をはじめとする英文解釈の参考書で学びながら(紙に書いて訳し、解説と解答を見ながら添削し、その後5~10回音読する)意を強くしているのは、英語の訳読の勉強って「学生が訳して教師が添削する」よりも、②「学生がまず訳し、その学生自身が模範解答(あるいは試訳)と解説を読みながら自己添削する」方が教育効果がずっと高いのではないか、ということだ。

では②における教師の役割は?

学生が自己添削では解決できなかった点を補足することに尽きると思う。
具体的には、例えば

(1)教師は学生が訳した英文ではなく、自己添削した文書を提出してもらい、それを評価する。要は、添削の仕方を添削しながら、問題点を探るわけだ。
(2)学生が、自己添削でも理解できなかったり、疑問が生じたりした点について答える。
(3)解説に書かれていない補足事項や予備知識を説明する。
ということではないか。

『英文標準問題精講』は問題文が一級品で、訳文も非常に高度でありながら、それ以外は語句説明ぐらいしかない。これは著者が、本書を読める学生であれば訳文と簡単な語句説明だけで英文の構造を把握できるはずだという前提に基づいていると思う。その意味では実に不親切な参考書とも言える(余談もご参照ください)。

しかし教師がまず参考書を学生に渡してしまい、訳文を自分で考えて(もちろん解答を見て)自己添削するところまでを予習として宿題にし、授業ではそこまで取り組んだことを前提に、同書には触れられていない文法や構造の解説、作品や著者の背景説明、さらには(学生が自己添削しても)分からない点を質疑応答方式で説明するには、本書はうってつけの参考書になるのではないか。

対象は?

難関大学を狙う高校生(毎週2題程度:50分)初期10日間の基礎問題50問を半年で。2年かけて1冊のイメージ
難関大学教養学部生(毎週5題程度:90分)初期10日間の基礎問題50問を夏休み前まで(夏休みの宿題は練習問題を完全自習):1年かけて1冊かな。
③翻訳入門コースの受講生(毎週10題程度:90分。あとは自習)。半年で1冊のイメージ。ただし講師は「自己添削の添削」を全問について提供する(完全自習にしない)。

てな感じでしょうか。
もちろん、以上は学習者としての僕の経験と感想に基づく仮説です。

(余談)現在『英文標準問題精講』の「後期10日間」応用問題第96問に取り組んでいる(5月から毎朝30分ぐらいでここまで来た)。後期10日間の問題は、前期、中期に比べやや長め(とは言え、長文問題といえるほどではない)で、幾分易しめの英文を読ませ、「下線部について訳せ」とか「(  )内には何が入るか」「単語を並び替えよ」という体裁の問題が並んでいるのだが、ところがナンと、そういう問いに対する解説がほぼないのだ。答えだけ。それ以外は前期、中期と同じで「研究」と称する簡単な解説(問いと関係ないものが大半)と語句、そして全訳のみなのだ。つまり、どうしてそういう「解答」になるかは自分で考えてねって・・・「これって何?」という感じです。その意味では「手抜き」感が半端なく、全訳して練習するのでない限り(繰り返しになりますが、取り上げている文章は一級品)、長文を読んで様々な問いに答える問題集としては『英文標準問題精講』の後期は適していない。高校生の自習用にも向かないと思います。