金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

学校の先生や講演の講師に望むこと「試行錯誤を見せてほしい」

大学の先生方や講演者に望むことは、「自分の試行錯誤を見せてほしい」ということである。それが最も教育的だと思う。

定期的に(たとえば毎週、あるいは毎月)開催される通常の授業では、先生自身が解決できない問題を提示し、自分の疑問もそのまま認めた上で学生と考えていく授業が可能なはずだ。私がこの10年ほど断続的に受けている研究社編集部金子靖さんの授業がその典型だ。金子先生は、わからないことも率直に示し、自分の考えを学生と共有する。こうした実践を通じて、学生は多くを学ぶことができる。

一方で、一度限りの講演では、時間内に講師の試行錯誤をすべて見せると、ポイントが絞れずに聴衆が混乱する可能性がある。課題が与えられたときには、それに対する自分なりの答えをある程度整理して用意する必要がある。今年の4月のウェビナーで私が依頼された講演がその一例だ。与えられた時間は10分しかなく、非常に困った。

そこで、苦肉の策として、生成AIについて書いたブログ記事の一覧を公開することにした。私は試行錯誤をそのまま書くタイプだったので、それを時間を追って読んでいただければ、何に躓き、今何に困っているかを理解してもらえると思ったからである。

私の場合は、聴衆の皆さんよりも特に知識が豊富なわけではなく、ただ自分の体験談を知ってもらえればとの思いだった。どの程度の効果があったかはわからないが、少なくとも、「すべてをわかっているエライ先生が神の視点から『これはこういうものですよ』と教えてあげるスタイル」よりはましだったのではないか、と今振り返って思う。

研究職に就いている皆さんが、たとえば私が試みたように研究メモや記録をそのまま開示して学生に判断してもらう方法を取り入れれば、教室はより活気に満ち、生き生きとしたものになるのではないかな(え、もう実施されている?失礼しました)。