金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

ノーム・チョムスキーとテッド・チャン:生成AIの信頼性に疑問を呈した二人の巨匠 (2024年2月14日)

2022年11月30日にChatGPT-3が公開されてから1年2カ月。僕がその存在を知ったのは2023年2月上旬ぐらい。「ちょっと普通ではない」と感じてビジネス英語教育Q-Leapさん向けの記事にまとめたのが昨年の3月だ。

 

ビジネスに役立つ経済金融英語 第19回:いまさら聞けない(!?)ChatGPT入門

q-leap.co.jp

この記事にも書いたように、ChatGPT4は昨年3月14日に公開され、その後まもなく有償サービスも始まった。私もその性能に驚愕し、4月から毎月20ドルを支払ってアシスタントとして使い始めた。

その後ChatGPTを中心に多種多様な生成AIがサービス競争にしのぎを削るようになったわけだが、あれから1年近くがたち、改めて生成AIの可能性や限界は何かを考えながら仕事で利用している人も多いのではないだろうか。

そこで今回は、まだChatGPT-4が出たばかりの頃に発表されていた2本の記事を紹介しておきたい。

1本目は、2023年3月8日付『ニューヨーク・タイムズ』(NYT紙)のOp-ed(論説)欄に掲載された、言語界の巨匠チョムスキー博士の論評だ。

1. Noam Chomsky: The False Promise of ChatGPT By Noam Chomsky, Ian Roberts and Jeffrey Watumull(「ノーム・チョムスキー:ChatGPTの虚偽の約束」)

www.nytimes.com

ニューヨーク・タイムズから「プレゼント」として無料開放された記事)。

そしてもう1本は、2023年2月9日付『ニューヨーカー』(NY誌)に掲載された「当代最高の短編SF作家」(日本語版WIRED編集部)テッド・チャン氏のエッセイである。

2. ChatGPT Is a Blurry JPEG of the Web-OpenAI’s chatbot offers paraphrases, whereas Google offers quotes. Which do we prefer? By Ted Chiang(ChatGPTはウェブのぼやけたJPEGである ― OpenAIのチャットボットは言い換えを提供するが、Googleは引用を提供する。我々はどちらを好むのか? 」)

(回数制限はあるはずだが、とりあえず最初の何回目かのアクセスまでは無料で読める)。

www.newyorker.com

 

チョムスキー氏のメッセージを一言で言うと「LLMは人間を超えられない」、そしてチャン氏のエッセイは「LLMは歪んでいる」ということだ。

二つの記事が発表されてから10カ月以上が過ぎ、技術進歩によって当時の彼らの指摘した問題点をChatGPTがすでに克服している可能性はある(もっとも僕のレベルではわからないです)。しかし仮にそうだとしても、そこで指摘された問題点は、私たちが今後ChatGPT(生成AI)を使っていく上での深い示唆になるのではないかと考えた。どちらも資料としての価値は相当高いと思うので、興味を持たれた方は、ご自分の英語力、あるいはChatGPTを駆使して是非直接お読みください。