金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

サービスにタダはない。

以下は、3日ほど前にお客様に送ったメール(編集済み)の一部である。

(ここから)
なお、昨日お尋ねいただいた追加の件についてお答えさせていただきます(今朝お電話申し上げたのはこの件です)。

私どもとしては、ご依頼を①追加の翻訳依頼であれば文字数を計算し、お見積もりをださせていただきます。②〇〇さん(先方の担当者)がお作りになった英文のチェックということであれば、これはコンサルティングになりますので時間給(1時間あたり1万円。ミニマムチャージ)となります。どちらかご指定いただければ対応させていただきます。もちろん、ご発注いただかないという判断はありかと思います。ご検討のほどよろしくお願いします。(ここまで)

 

(状況の説明)
某社から英訳の依頼あり。ネイティブ翻訳者が翻訳、私がPM(プロジェクト・マネジャー)を引き受けた。締め切り前日になって、先方から「若干追加があります(日本語で40文字ぐらい)。私が英語にしてみたので、これを見てもらえませんか?」というメールが来た。

会社員によくありがちな「こちらサイドのコスト無視の『お願い』メール」であり、上はそれに対する私の返信である。

「お電話したのはこの件です」と書いたのは、まずは電話で説明しようと思ったからだ。いきなり上のようなメールを送ったら、いかにもビジネスライクで冷たく響くとおもったからだ。電話をしても半日返事がなかった。翌日締め切りなのでやむなく上の様なメールを送ったら電話が来た。

「お電話いただいてましたね。スミマセン。メールも拝見しました~」
「Lさんはおそらく気軽に私宛にお願いメールをされたと思うのですが、これって我々にコストがかかるんですよ。当然ネイティブ担当者のSさんとも話をし、見てもらいますし、今この電話もそうです。メールの前にお電話1本でもいただければ、『じゃ、いいですよ~タダで』という可はあったかもしれません(注:ただし実際には、僕一人ならばそうできたかもしれないが、今回は翻訳者が別にいるので、僕一存では決められないので安易にこういう提案はできない)。でもメールでご依頼されたらこちらとしては見積もりを出すしかないじゃないですか。その点をお分かりいただきたくて・・・まずは電話したのですがご返信いただけなかったのであのようなメールになったわけです」
「はい、よ~くわかりました。申し訳ありません」

でこの話は終わり、結果としてはLさんが提案してきた英文をそのまま使えることになって納品済みである。ちなみにネイティブ担当者は、「鈴木さん、これ、タダでいいですよ~」と言ってくれたのだが上の事情を説明し、きっちり半分をお支払いすると約束した。

金額なんて大したことありません。でもこれってとっても大切なことだと思ったのでここに記した次第。