金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

ソースクライアントからの仕事を断った話と和英翻訳における(PMとしての)私の役割について(2016年5月18日)

昨日も3件納品した後は少しゆっくり。夕方に実家まで散歩して今日から始まるR大学のWSJ講座の準備でもしようかなと思っていたところに電話(午後6時30分)。某ソースクライアント。「明日原稿できるので金曜日に納品してもらえないか?」和英案件2800文字だ。

すぐにネイティブ翻訳者二人に連絡するが、当然予想されたごとく「無理」。二人ともむちゃくちゃ忙しい翻訳者なので、かなり時間の余裕が必要なのだ。やむを得ない。利は薄くなるが仕事はしっかりしている(翻訳者は英語、米語のいずれかもネイティブを指定できる。チェッカーは社内の米国人)某翻訳会社に電話。「鈴木さん、和英は現在決算対応で月末まで手一杯です」。そうかー。

お客様に電話し、「大変申し訳ありませんが、この内容の、この量のものを中1日は無理です。といいますか月末まで無理です」と状況を話す。「スミマセン。僕が訳しているわけではないので・・・」先方も「・・・ああ、そうですか。やむを得ませんね」「申し訳ありません。また何かあれば」と電話を切った。

ソースクライアントからの仕事を断ったのは初めてかなあ、しかしない袖は振れないしやむを得んなあ、よく知らない翻訳者に頼むことはしたくない・・・と若干悔しい思いを残しながら、お客様にご期待に添えなかった旨のお詫びのメールを送り、お客様から来たメールと添付ファイルを削除していると・・・また電話。

「鈴木さん、実は正式には30日に客先に出すのでそれまでに間に合えば・・・何とかなりませんか?」「やってみましょう」。

で「今週はどうしても無理・・・・」と言っていたネイティブ担当者のDさんに電話。原稿も送って見てもらう。僕の苦しい立場をわかってくれたのだろう。電話がくる「できます。大丈夫です!」オッシャー!!!。再び先方に電話。「ネイティブ担当者都合つきました」「よかった~!!!」

ここから先はプロジェクト・マネジャー(PM)としての僕の仕事だ。

「で、実はお金の話をしていなかったのですが・・・・先ほどお断りした事情でもお話ししましたように、月末までギチギチに忙しい担当者のスケジュールを無理にこじ開けてもらいましたので、急ぎ案件ということで10%の割り増しを・・・」「は、はいわかりました」でDone。当然ネイティブ担当者の方にも10%強増額でお支払いします(基本的には折半なのだが、単価が切りの良い数字にならなかった場合にはネイティブ担当者の単価を切り上げることにしているので)。

最初のお客様の電話からここまで30分。これが翻訳会社の仕事なんだね。

「損して得取れ」とはちょっと違うけど、まあ誠実に対応していてうまい方向に転がった事例としてご紹介しておきます。