金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

出版翻訳雑感

ここ3日ほど、書籍中心の生活を送ってきた(要するに、実務翻訳が暇だったということです)。毎日5~6時間やっていて、なるほどこのペースなら3カ月で1冊は行けるかなと思いました。ただ勝手知ったる(調べ物は確認が多い。調べるポイントも分かっている)実務翻訳とは異なり、書籍の場合、引用文については極力原文を当たるし、訳書があれば取り寄せて、場合によっては全部読む必要があるので、単にワード数でパッと訳すわけにはいかない。引用文の前後を読む必要があるのと、訳書がある場合は訳文の確認をどうしてもしておきたいからだ。

これは僕の印象だけど、原文(原著)はたいていネットで見つかる。特に古い(10年以上たった)本の場合はまず100%ある。新聞雑誌もある程度年数がたっているとほぼ全部読める(アーカイブは公開しているのかな?:未確認)。

訳書は、自分の英文の理解が正しいかの確認用で、自動的にそのまま使うことはない。あくまでも参考程度にとどめる。ただしその訳書を読む人もいるだろうから、そのまま使えるのであれば使うようにするし、似たような文体にするとか工夫はします。越前先生の書籍などを読むと、文芸翻訳の場合は既訳をほぼ絶対視しているような印象を(僕は)抱いていますが、ノンフィクションは村井章子さん方式、つまり「自分が理解した英文をわかりやすい日本語にする」というスタンスが正しく、既訳にとらわれる必要はないだろうと思っている(ある学問分野で定訳が確立しているものは別ですが)。

そんなこんなで、訳している時間もさることながら調べ物が実務よりも多くなるので、1冊訳すとどんどん参考文献が増えていく。全部買っていたら結構金がかかるし、一行を確認するために一冊買うのももったいない。しかも初版を前提とすれば印税は安いので、まずは図書館で取り寄せます(我ながらセコい)。図書館にない場合、あるいは極めて重要で残しておきたい場合にのみ購入する。

お金がかかるということで言えば、僕は書籍を訳す場合は、英語のネイティブ・スピーカーにお金を払って(もちろん自腹です:『金融英語の基礎と応用』の時は1300強の英語原文の校正をお願いした関係で、編集部に交渉してお金を出してもらいましたが、あれは例外)質問をぶつけて答えてもらうようにしています。毎回、1冊いくらで契約して、わからない箇所につき意見を求めるわけです。

以上書籍翻訳に関する余談まで。今日から年末まで実務翻訳が忙しくなってくるので、気を引き締めないと。

よい1日を!