昨日の夕食時の会話
「おい、明日は日本は休日だな」
「お父さん、それじゃ日本にいないみたいじゃない。それを言うなら『世間は』でしょ」
外国の翻訳会社との仕事が終わったところだからかな。
それは、ある会社の第3四半期(7ー9月期)決算発表用プレスリリースの翻訳のQAだった。僕は未だにTrados Studioの「パッケージ」に慣れないので、「原文と訳文のワードファイルを送ってくれ。直接直すから」と要請したら、パッケージとともに送ってくれたのでそれを直しました。ただし「この会社用」として支給されていたTMはなぜか見ることができなかった。
以下はQA(品質管理)を納品した時に担当翻訳者への評価コメントで述べた内容である(一応へっぽこジャパニーズ・イングリッシュで書きました)
「翻訳者は優秀です。唯一の、そして致命的な欠点は、彼/彼女が2015年第2四半期のプレスリリース(英語と日本語)を確認していないと思われる点です。翻訳者は第2四半期の決算発表では使われていなかった表現(訳語)を多数用いていました。恐らく、翻訳者は貴社から支給されたTM(翻訳メモリ)に依存し過ぎていたのではないでしょうか。彼/彼女が(恐らく)100%マッチで使った++という訳語は、1年前のプレスリリースでは使われていたかもしれませんが、少なくとも直近の第2四半期には使われていなかったのです。
かねてから指摘しているとおり、貴社のTMは必ずしも質が良くない ― と言うよりも、文脈によって表現が変わり得るこの手の翻訳には、複数の人間によって異なる時期に入力されたTMは不適切なのです。
とりわけプレスリリースの場合に最も重要なポイントの一つは、表現の継続性です。もちろん、表現を改善したり誤りがあったときにそれを直すのは当然のことです。しかしそうでない限りは、極力、同じ内容について公表された文書を最優先の前例として使うべきではないでしょうか。
貴社がすべきことはTMを作ることではなく、文脈によって変わらない用語(専門用語等)についての表現集を作って翻訳者に配布することです。さもないと、この仕事をあてがわれた翻訳者は、きちんと管理されていないTMの、文脈に合わない表現を無自覚に使ってしまいかねない。私はかつて指摘した重要点をもう一度指摘しなければならない。経済/金融関係の文書の翻訳は製品の取扱説明書ではないのです」
ホント、TM依存症は怖い。僕も戒めないと(僕は翻訳の99%でTMを使っている)。
ちなみに、僕は顧客ごと、書籍ごとのTMを使っています。ただ、すべて自分の訳したもので、公表された後は自分の翻訳と比べて、文節ごとに(〇〇社の△レポート、●年〇月号)、お客様から支給されたものは(〇〇社から支給)というメモをTMに記憶させています。そして最後の仕上げではTMから離れる(本の場合は無視する)。