金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「万引き家族」感想

 

評価:★★★★★

とても心を動かされたし見に行って良かったと心から思います。

素晴らしい映画だったと思う。

しかしもう一度見たいかと言われると逡巡する。
この映画には(少年の未来に対する希望的観測以外には)「救い」がないと思うからです。

自分はこの目で見たことがないけれど、こういう貧困、というか不幸がもしこの日本にあるのなら(ノンフィクションではないから本当のところはわからないし、たぶん現実のデフォルメなのだろうという納得感も得られない。残念ながら僕の人生経験ではこういう不幸な世界があるのかもしれないという想像しか浮かばない)、自分にできることは何だろう?そういうどこか後ろめたさを感じながら、最初から最後まである種の緊張感の中で見終えたというのが正直なところです。その意味では見終わったときの感覚は「誰も知らない」に似ている。ただ、2004年時代ではまだ「自分には無縁だ」「自分たちの住んでいる世界からは遠い」と言い切ることができたような気がする。「万引き家族」の方が今の社会に近い感じがするのはなぜなんだろう?そう思いながら見ていました。

一人、夫婦、またはどんなことでもお互いに言い合える心の友がいたら、その人一人と見ることをおすすめします。家族全員で見る映画ではないし、友達同士連れ立って見る映画でもない。恋人同士でもない。何しろ「救い」がないので、みんなで「あそこよかったね~」って言えるシーンがないのよ。心を動かされるシーンやセリフはひとそれぞれ。しかも悲しい、というかつらい方向なんですわ。