金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

allの用法について五つの生成AIに尋ねてみた(『スローでディープな英文精読』より)

今朝、4つの生成AIと次のようなやり取りをしました。ご参考まで。

(問い)You didn't have to go to all that trouble. I could have done it. と言う文章でのallの用法は、①「すべて 全員」の意味か、それとも②相手が払った「全ての手間」や「努力」を指しているのか、それとも③数量や程度のはなはだしさを言っているのか?

(Gemini) by Google
ご質問ありがとうございます。

"You didn't have to go to all that trouble. I could have done it." の all は、②相手が払った「全ての手間」や「努力」 を指しています。

①「すべて 全員」 や ③数量や程度のはなはだしさ という意味も考えられますが、この文脈では、相手がしてくれたことを感謝しつつ、自分ができたのに申し訳ない という気持ちが込められているため、② の意味が最も適切です。

以下、それぞれの解釈と、その解釈が適切ではない理由を説明します。

①「すべて 全員」

この解釈の場合、「あなたは全員が苦労する必要はなかったのに」 という意味になります。しかし、この文脈では、相手が一人で行ったことを指しているので、この解釈は適切ではありません。

③数量や程度のはなはだしさ

この解釈の場合、「あなたはそんなに大変なことをする必要はなかったのに」 という意味になります。しかし、この文脈では、相手が払った努力や手間を強調しているので、この解釈も適切ではありません。

さらに、以下の点から、②の意味が最も適切であることがわかります。

「all that trouble」 という表現は、「たくさんの手間」 や 「大きな努力」 という意味を表す慣用句です。
「I could have done it」 という文は、「私ができたのに」 という意味であり、相手がしてくれたことに対する感謝の気持ちを伝えています。
以上のことから、「You didn't have to go to all that trouble. I could have done it.」 の all は、②相手が払った「全ての手間」や「努力」 を指していると言えます。

この解釈を理解することで、より自然な日本語訳を作ることができます。

以下、いくつかの日本語訳例を紹介します。

そんなに苦労しなくてよかったのに。私ができたのに。
わざわざそんな大変なことをしなくてよかったのに。私ができたのに。
そこまでしていただかなくてよかったのに。私ができたのに。
これらの日本語訳は、相手がしてくれたことに対する感謝の気持ちを伝えつつ、自分ができたのに申し訳ない という気持ちを伝えることができます。

ご参考になれば幸いです。

(Bing) by Microsoft
「all」の用法は、文脈によって異なります。この文での「all」は、相手が払った「全ての手間」や「努力」を指していると解釈されます。具体的には、相手が手間をかけたことに感謝しているという意味ですね。

したがって、この文は「あなたはそこまで手間をかける必要はありませんでした。私がやれたのに」という意味になります。相手に感謝の気持ちを表していると言えます。

(Claude)by Anthropic
はい、ご質問ありがとうございます。
この文脈でのallの用法は、

2相手が払った「全ての手間」や「努力」を指している

という意味合いだと考えられます。

理由は以下の通りです。

・You didn't have to go to all that trouble.
で、「あなたはその手間のすべてを払う必要はなかった」という意味

・I could have done it.
で、「私がやることができた」という意味

ですので、ここでのallは相手の労力の「全て・全部」を指し、
その労力を払う必要はなかった、というニュアンスになっています。

したがって、この文脈でのallは、数量や程度のはなはだしさを表すよりも、
むしろ相手の払った労力の「全て」を指しているといえます。

いかがでしょうか。ご不明な点等がありましたら遠慮なくご質問ください。

(ChatGPT-4)by Open-AI
この文脈での "all" の用法は、②相手が払った「全ての手間」や「努力」を指しており、同時に③数量や程度のはなはだしさも表しています。つまり、「あなたがそんなに多くの努力をする必要はなかった」という意味で用いられています。この "all" は、相手が行った手間や努力の全体を指し示し、その量や程度が必要以上であったことを表現しているのです。したがって、①「すべて、全員」という意味ではありません。

まとめると、Gemini, Bing, Chat-GPTが②、Claudeは②または③という答え。4つとも①を否定している。

のなお、元々の文章は今井・平沢著『スローでディープな英文精読』(研究社)p64訳注⑤から。(以下引用)「all those eptetitious pronouns: このallは「すべて、全員」ではなく、数量や程度のはなはだしさを強調する用法・・・(中略)・・・「すべてのrepetitious pronouns(鈴木注:「繰り返される代名詞」)と言いたいならwithout any of those epetitious pronouns)(引用ここまで)。であって、②への言及はそもそもないし、文脈的にも検討の必要がないと思う。

生成AIの見解には、「明らかな誤り」「しったかぶり」「作為または偽装、あるいは幻覚」(SF作家のテッド・チャン氏がニューヨーカー誌で指摘したLLMの欠点)もあるかもしれない。実際、Geminiの答えは一見それらしいがよく読むと何か不自然だ。Claudeは②と答えつつ、後半では①に未練たっぷりな書きぶりだ。僕がこれをまじめにしらべていれば、それぞれの不自然な点を突っ込んでいくだろう。

いずれにせよ複数の生成AIに尋ねることで見解のずれがある(と解釈することにした)ことが確認できた。

いい勉強になりました。

(後記)念のため、Llama 2(by Meta)にも聞いてみた(これは答えが全部英語です)。

The usage of "all" in the sentence "You didn't have to go to all that trouble. I could have done it." can be interpreted in multiple ways, depending on the context and the intended meaning. Here are three possible interpretations:

「すべて」「全員」 (Subete/Zen'in) - In this interpretation, "all" refers to a total or complete amount of something. For example, "You didn't have to go to all that trouble" means "You didn't have to go through all the effort" or "You didn't have to do everything."
「全ての手間」や「努力」 (Zen'te no shūmatsu/Kufū) - In this interpretation, "all" refers to the entirety of something, such as all the effort or all the trouble. For example, "You didn't have to go to all that trouble" means "You didn't have to go through have to put in all the effort."
「数量や程度のはなはだしさ」 (Shūryō ya kyūryō no hanahada shisa) - In this interpretation, "all" refers to a large quantity or degree of something. For example, "You didn't have to go to all that trouble" means "You didn't have to do so much" or "You didn't have to put in so much effort."
So, the usage of "all" in the sentence "You didn't have to go to all that trouble. I could have done it." can be interpreted in multiple ways, depending on the context and the intended meaning. It could refer to a total or complete amount, the entirety of something, or a large quantity or degree of something.

要するに「文脈による」との答えであった。

めでたしめでたし(?)

(注意)生成AIの利用は投資と同じです。ご利用は自己責任でお願いします。