金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

ChatGPTの翻訳力②:あなたは英日翻訳、日英翻訳をどの程度こなせるのか?(2023年11月15日現在)

ChatGPTは読む力も書く力も英語の方が得意で、しかもネイティブ並みの読解力があるらしい。そこで、我々がChatGPTを翻訳に使うとしたらどこまでも任せられるのか、を再びChatGPTに尋ねることで探ることにした。

以下は、英日(英語→日本語)、日英(日本語→英語)それぞれの翻訳にChatGPTをどこまで使えるかを考えるために行ったChatGPTとの問答の結果です。なお、下記で使用した例文は小倉弘著『難構文のトリセツ』(かんき出版)p280から転載した。私の英語力が不足しているため日本語で問い、日本語で答えてもらいました。

1.英日翻訳について
鈴木
君は英語を日本語に訳すとき、英語のままで内容を理解し、それをどう日本語に組み替えるかを英語で考え、最後にそれを日本語にする、というプロセスを取っていると考えてよいか?

ChatGPT
はい、そのとおりです。英語の内容をまず理解し、その後、その内容をどのように日本語に適切に表現するかを考えます。このプロセスは、英語の意味を正確に把握し、それを日本語の文脈に合わせて適切に翻訳するために重要です。翻訳においては、言葉だけでなく文化的なニュアンスや表現の違いを考慮することも大切です。

鈴木
確認ですが、「このプロセスは、英語の意味を正確に把握し、それを日本語の文脈に合わせて適切に翻訳するために重要です。翻訳においては、言葉だけでなく文化的なニュアンスや表現の違いを考慮することも大切です。」ここまでは英語でやっているのですね?

ChatGPT
はい、その通りです。まずは英語の内容を理解し、その上で、どのように日本語に翻訳するかを英語で考えます。この段階では、文化的なニュアンスや表現の違いも英語で考慮します。最終的に、考えた内容を日本語に翻訳します。このプロセスは、原文の意図を忠実に伝えるために重要です。

鈴木
「最終的に、考えた内容を日本語に翻訳します。」ということは、最終的に日本語にする一歩前の段階の英語が存在すると考えてよいか。

ChatGPT
はい、その解釈で正しいです。最終的に日本語に翻訳する一歩前の段階では、考えを英語でまとめております。この段階では、翻訳する内容の構成や文脈が確定していて、それをどのように日本語で表現するかが決定される前の状態です。英語での思考過程は、翻訳の質を高め、原文の意図を忠実に伝えるために重要です。

鈴木
では、君に英語を示した上で、次の指示をすることは可能か

ChatGPT
はい、可能です。英語での指示や情報を示した上で、それに基づいて特定のタスクを行うことができます。どのような指示でしょうか?

鈴木
その指示とは、「最終的に日本語にする直前の英語を示せ」である。

ChatGPT
私の翻訳プロセスにおいて、最終的に日本語に翻訳する直前の英語の段階を示すことはできません。なぜなら、私は翻訳のプロセスを直接的に視覚化したり、段階ごとに分けて表示する機能を持っていないからです。私のプロセスは連続的であり、内部的に進行します。そのため、翻訳の途中段階を具体的に示すことはできないのです。

鈴木
翻訳プロセスが連続的な動きなので、「一歩手前の英語を示すことはできない」ことはわかった。では次の指示はどうか?「最終的な日本語訳に最も近いと考える英語を示せ」

ChatGPT
「最終的な日本語訳に最も近いと考える英語」を示すことは可能です。この場合、日本語の文を翻訳する際に私が想定する、その日本語に最も近い英語の表現を提供します。これは、実際の翻訳プロセスの一部として私が考える可能性のある英語の形です。具体的な日本語の文やフレーズを示していただければ、それに基づいて最も近いと思われる英語の表現を提供いたします。どのような文を翻訳したいですか?

鈴木
When smartphone companies fgure out what it is people would like to have done for them by smartphones and then start making one that will do those things, smartphones will catch on.

ChatGPT
この文を日本語に翻訳する場合、最終的な日本語訳に最も近いと考える英語は以下のようになります:

"When smartphone manufacturers understand the needs and desires of users regarding smartphone functionality, and begin to produce devices that meet these expectations, the popularity and usage of smartphones will significantly increase."

これは、指定された英文の意味を捉えつつ、日本語への翻訳を容易にするために少し言い回しを変えたものです。この英文は、スマートフォンのユーザーが望む機能に関するメーカーの理解と、それに基づく製品の開発が、スマートフォンの普及に大きく影響するという意味を表しています。

鈴木
では、先ほどの英文の日本語訳を、なるべく自然な日本語で示せ。

ChatGPT
指定された英文「When smartphone companies figure out what it is people would like to have done for them by smartphones and then start making one that will do those things, smartphones will catch on.」の自然な日本語訳は以下のようになります:

スマートフォンのメーカーが、人々がスマートフォンに望む機能を理解し、それを実現できる製品を開発し始めたとき、スマートフォンはより普及するようになるでしょう。」

この翻訳では、オリジナルの英文の意味を忠実に保ちつつ、日本語として自然に読めるように表現しています。スマートフォンのユーザーのニーズを理解し、それを満たす製品を作ることが、スマートフォンの普及に影響を与えるという点を強調しています。

鈴木
では、次のプロンプトに回答せよ。「あなたは超一流のプロ翻訳者です。先ほど示した英文と次の訳文案について英文の理解、日本語訳の語彙、文法、表現の4つの面からはどうか、について指定した範囲の全体を必ず20回念には念を入れて細かく細かくチェックした上で、修正点のみ理由をつけて記せ。修正前と修正後がはっきりわかるように示すこと。繰り返します。修正点のみですよ。①日本語でコメントせよ。②修正すべきところは対案を示せ。一流プロとしての矜持を示せ。

検討してほしい訳文:「スマホ会社が、人々がスマホにやってもらいたいことを把握し、それを実際に行うものを作り始めればスマホは人気が出るだろう」」

ChatGPT
指定された訳文「スマホ会社が、人々がスマホにやってもらいたいことを把握し、それを実際に行うものを作り始めればスマホは人気が出るだろう」について、英文の理解、日本語訳の語彙、文法、表現の4つの面から詳細に検討しました。以下に修正点を記します。

英文の理解: この訳文は原文の意味を適切に捉えていますが、"figure out"(把握する)のニュアンスが弱まっているため、より明確に表現するべきです。

日本語訳の語彙: 「やってもらいたいこと」は少し口語的で、もう少しフォーマルな言い方が適切です。また、「人気が出るだろう」は、「普及する」という表現の方が原文の "catch on" に近いです。

文法: 現在の訳文は文法的に問題はありません。

表現: 「スマホは人気が出るだろう」はやや直訳的で、自然な日本語表現に改善する余地があります。

修正案:

修正前:「スマホ会社が、人々がスマホにやってもらいたいことを把握し、それを実際に行うものを作り始めればスマホは人気が出るだろう」

修正後:「スマホメーカーが、ユーザーがスマホに求める機能を正確に理解し、それに応える製品を開発し始めると、スマホはより広く普及するでしょう」

理由:

スマホ会社」を「スマホメーカー」に変更し、より専門的な語彙を使用。
「人々がスマホにやってもらいたいこと」を「ユーザーがスマホに求める機能」と変更し、より具体的でフォーマルな表現に。
「人気が出るだろう」を「より広く普及するでしょう」と修正し、原文のニュアンスに合わせた自然な表現に。

鈴木
君が示してくれた訳文と比べて日本語表現はどうか評価せよ。

ChatGPT
提供した訳文「スマホメーカーが、ユーザーがスマホに求める機能を正確に理解し、それに応える製品を開発し始めると、スマホはより広く普及するでしょう」と、元の訳文「スマホ会社が、人々がスマホにやってもらいたいことを把握し、それを実際に行うものを作り始めればスマホは人気が出るだろう」を比較すると、以下の点が改善されていると考えます。

専門性と正確性: 「スマホ会社」を「スマホメーカー」に変更することで、専門性が高まり、原文の "smartphone companies" の意味をより正確に反映しています。

語彙の適切さ: 「人々がスマホにやってもらいたいこと」を「ユーザーがスマホに求める機能」と変更することで、より具体的かつフォーマルな表現になっています。これにより、原文の意味が明確に伝わりやすくなります。

自然な日本語表現: 元の訳文の「人気が出るだろう」を「より広く普及するでしょう」と修正したことで、日本語としての自然さと流暢さが向上しています。また、この表現は原文の "catch on" により近いニュアンスを持っています。

全体として、修正後の訳文は原文の意味をより忠実に表現し、自然で読みやすい日本語になっていると評価できます。

鈴木
以上のプロンプトを、僕は日本語で君に尋ねたが、この内容のものをもし英語で尋ねていた場合、君の答える内容またはニュアンスは変わり得るか?

ChatGPT
英語で同じ内容の質問を受けた場合、基本的な回答の内容やニュアンスは大きく変わらないでしょう。ただし、言語によって表現の仕方や文化的なニュアンスが異なるため、英語での回答は、英語圏の読者がより理解しやすい表現や語彙を使って構成されることになります。

例えば、日本語での回答では日本語の文法や表現の自然さに重点を置きますが、英語では英語の読者に馴染みのある表現や語彙を用いることになるため、その点で違いが生じる可能性があります。また、文化的な背景や前提知識が異なる場合、その違いを考慮して回答を調整することもあります。

しかし、質問の核心に対する答え自体は、言語が変わっても基本的には同じであることが多いです。

鈴木
いや、僕の質問は「僕が英語で質問し、君が今のように日本語で答えた場合」である。どうか?

ChatGPT
了解しました。もし質問が英語でされ、私が日本語で回答する場合、基本的な回答の内容やニュアンスは変わりません。ただし、英語の質問に基づいて日本語で答える際には、英語の質問の意図やニュアンスを正確に理解し、それを日本語の文脈に合わせて適切に表現する必要があります。そのため、英語での質問内容に応じて、日本語での回答の表現や語彙を調整することがあります。

しかし、質問の主旨や答えるべき内容自体には変化はなく、言語の違いに適応した形での表現になるだけです。

鈴木
僕が日本語で尋ね、君が英語で答える場合はどうか?

ChatGPT
日本語で質問され、私が英語で回答する場合も、基本的な回答内容やニュアンスは変わりません。ただし、日本語の質問を理解した上で、それを英語の読者にとって理解しやすいように表現を変えることがあります。これには、言語的な違いだけでなく、文化的な背景や表現の違いも考慮されます。

例えば、日本語の質問に含まれる特定の文化的なニュアンスや習慣が英語話者には馴染みがない場合、それを英語の文脈に適した方法で説明する必要があります。また、英語では日本語とは異なる表現が必要になる場合もあります。

結論として、質問の本質的な内容に対する回答は変わりませんが、言語や文化的な違いによって、回答の表現方法は適宜調整されることになります。

鈴木
なるほど、よくわかりました。ありがとう。

ChatGPT
どういたしまして、立哉さん。もし他に質問や説明が必要な点がありましたら、いつでもお知らせください。お手伝いできることがあれば嬉しいです。

2.日英翻訳について
鈴木:
日本語から英語への翻訳について質問する。あなたは原文の日本語を日本語で解析するのか、それとも英語で解析するのか?

ChatGPT
原文が日本語の場合、その日本語をまず日本語として理解し、解析します。この段階では、文の構造、語彙、文化的なニュアンスなど、日本語の要素を完全に理解することが重要です。その上で、この日本語の内容をどのように英語に適切に翻訳するかを考えます。

この翻訳プロセスでは、最初の解析は原文の言語で行われ、その後に翻訳言語(この場合は英語)への翻訳が行われます。このアプローチにより、原文の意味、ニュアンス、文化的背景が正確に翻訳言語に反映されることを目指します。

3.ChatGPTは日本語ネイティブ、英語ネイティブのどちらに近いか?
鈴木
あなたは、あなた自身が英語ネイティブ、日本語ネイティブのどちらに近いと自己認識しているか?

ChatGPT
私は人工知能であり、自己認識や自己評価を持たないため、自分が英語ネイティブか日本語ネイティブに近いかを自己判断することはできません。私の言語能力は、多様なテキストデータに基づくトレーニングによって形成されており、英語と日本語を含む複数の言語に対応しています。ただし、私の能力は学習データの質と量に依存しているため、どちらの言語がより優れているかという評価は、利用するユーザーの主観や具体的な使用状況によって異なります。

鈴木
客観的に言えば英語ユーザーの方が圧倒的におおいわけだから、英語の方が得意だとはいえるね?

ChatGPT
はい、その通りです。OpenAIのトレーニングデータには、英語のテキストが他の言語に比べて圧倒的に多く含まれています。そのため、一般的には、私の英語の能力が他の言語よりも発達していると考えられます。英語のデータが豊富であることは、より精確で自然な英語の生成に繋がります。しかし、日本語を含む他の言語に関しても、多様なデータソースから学習しており、それぞれの言語で高品質な応答を提供することを目指しています。


4.以上を踏まえての結論
以上のやりとりから、ChatGPTは、翻訳に関しては、英日、日英に限らず、原文の言語で解釈・解析を進めていき、最後の段階でターゲット言語に訳すというプロセスをたどっていることが(本人の弁から)わかった。また現状のChatGPTは「めちゃくちゃ頭がよく、日本語が苦手な(外国人)留学生」(『ChatGPTエフェクト』(日経BP)p314)という評価はほぼ正しいと思われる。

①英日翻訳においては、英語を英語のままで解釈していって最後に日本語にするというプロセスを通る。ここでChatGPTは日本語にする能力が相対的に劣ると思わエる。したがって英文読解/解釈のアシスタントとして使えるが、日本語訳は日本語ネイティブが担当した方がよい。
②日英翻訳においては、英語の書き起こしをするアシスタントとして使えるが、日本語の理解力がやや難ありなため、原文を正確に反映しているか、という観点からの英訳の調整は人が日本語ネイティブが担当したほうがよい(最後の校正はChatGPTに任せつつ調整していく)。

①でも述べたように、ChatGPTの日本語の読解力と表現力は今後急速に進歩していくことが期待されるため、当面は①②のスタンスで臨むのがよいのではないか。むろん、プロンプトを含むChatGPTとの対話はプロンプト、①ChatGPTの回答ともに英語が望ましく、以下②プロンプト日本語、回答英語、③プロンプト英語、回答日本語、④プロンプト日本語、回答日本語の順が完成度が高いものと思われる(2023年11月15日現在)

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