金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

講演における「良い質問」、「悪い質問」(2016年9月)

秋は講演会のシーズンです。

私は(今年を例外にすれば)もっぱら聞き手というか聴衆側にいることが圧倒的なわけですが、長年、聞き手として、あるいは質問者として数々の講演会や勉強会に参加して、経験的に次のようなスタイルの質問を「良い質問」「悪い質問」という印象を持つに至りました。

もちろん、以下はあくまでも質問のスタイルの問題であり、スタイルと関係なく内容の良いもの、悪いものはあるでしょうし、例外も当然あると思います。
このスタイルの質問にはこういう傾向がある、という僕の印象を、あくまでご参考までにまとめておきますね。

(1)良い質問スタイル、というか姿勢
質問者が恥を忍んで、でもどうしても尋ねたいと思って、勇気を出して尋ねるような質問です。
そういう質問は
① 短い:思い切って尋ねたが恥ずかしい気持ちがあるので長くならない、
② 謙虚:「こんな質問していいのだろうか?」というスタンスなので。
③ かなり本質を突いている:実は他の参加者も同じ事を尋ねたいと思っていることが多く、本人が思うほど恥ずかしくない。いやそれどころか「よくぞそれを聞いてくれました!」というのが多い。
という特徴がある。

(2)悪い質問スタイル、というか姿勢
「自分はこういうことを知っている」「自分はこう考えている」ということをまず言ってから尋ねる質問です。
これはなによりもまず、
① 「そのこと」を講演者が知らなかったときに恥をかかせる可能性がある。対立、討論のようなものが主軸の講演会でない限り、あるいはお互いをよく知っている親しい者同士の少人数の会でない限り避けた方が良いと思う。
② まず、自説を展開してからの質問なので時間がかかる。
③ 質問というよりは自己顕示欲発露の場になることが多い。
④たいていの場合、その自説または知識は「ハズレ」である。「だから?」「意味ねーだろコラ!!」と叫びたくなるような内容のものが多い。

僕はこれまで、質問の手を上げるときに、「ちょっと恥ずかしい」と心理的に抵抗のあるものだけを尋ねるようにして、知っていることの確認は個別で聞くように心がけているつもりですが・・・実際にはどうかな?

なお、以上は、私が今週末に話し手となる講演会があるから書いたのではありません(説得力はないか)。

(後記)上の記事は5年前に書きました。その後2018年に『ティール組織』を出版した後、さまざまな若手経営者の皆さんが参加する講演会や勉強会に参加して、「良い質問」にもう一種類あることに気づきました。それは「知らないこと、疑問に思ったことを素直に尋ねる」という質問です。特別な勇気がいるとか、恥をしのんで、などという気負いは全くない。少人数で普通に会話している口調でどんどん質問し、講演者と建設的な対話を積み上げていく。しかも他の参加者の発言にも配慮し、耳を傾ける。そういう若い皆さんの姿を見て、僕は講演に対する自分の見方がいかに古かったかを実感したものです(2021年9月14日記)

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