金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

高校生の英文解釈(2014年6月)

昨日も夕方まで仕事をし、その後は日本橋でチョコを買い、丸善を覗いて会合場所へ。丸善日本橋と大手町に行ったが『世界でいちばん大切にしたい会社』はいずれも数冊置いてあるだけだった。書籍検索をすると「在庫僅少」とある。やっぱり物そのものが枯渇していると思うんだが・・・出版社も思案のしどころなのだろう。

お会いしたT先輩は元の上司。数年外国に行っていたので4年ぶりだろうか。会うなり「お前まだそんな仕事しとるのか。よく飽きないなあ」と一撃目。おずおずと『ブレイクアウトネーションズ』と『世界でいちばん大切にしたい会社』を差し出すと、ぺらぺらとページをめくりながら「いいか、おめーの文章は硬いんだよ。高校生の英文解釈なの!これはもう才能だから。今更努力したって治らないんだ!いいか、足の短い奴に足を長くせいと言ったって無理だろ。それと同じ!」2撃目を食らわされる。

「まあこれを読んで下さいよ」「うーむ・・・」「僕も変わってますから!!」「・・・確かに俺の女房も10冊目ぐらいの訳書は全然変わっていたからな。わかった。じゃ読んでみるわ」奥さん翻訳家(といっても文芸ではありません)なんです。

若いときから上司も部下も関係なく辛口で批評しては実績を残してきた人。本人が部長、私が課長代理の時に当時の常務のことを、「いいか鈴木覚えておけ、あいつは常務のくせして課長代理の判断しかできんのだ・・・あ、お前も課長代理だったな。ま、お前並みってことだよ」と平気で部下全員の前で言うような人だった。部長なのに役員車を日常的に使って使って「文句あるか!」と言う人だった。一方、部下には厳しくも優しい人だった。べらんめえ調でしかりながらも、最後は誉めて育てるタイプのひとでした。・・・そんなわけで彼の物言いには慣れているんだが、会うなりいわなくてもいいじゃん。「そんな丸一日パソコンの前に座ってたって何にも吸収できんだろう。もっと表へ出ろ」「はいはい」なーんて調子で2時間。実に楽しかった。

「次何やるんですか?」「まだ決まってねーよ。本は出す。ただな、お前の一言は効いているからな」「え?」「貧相な人生は送ってねーぞ」

僕はこの時のことをハッキリ覚えている。前回お会いしたときに、「おい、俺は次何をやったらいいんだ?」と聞かれたので「Tさん、聞かれたから申し上げます。あなたを尊敬している一人の後輩として望むことは一つだけです。あなたはもう功成り名を遂げた人なんだから、晩節を汚さないで欲しい。KさんやSさんのように訳の分からない会社の顧問や社外取締役になるなどという貧相な人生を送らないで欲しい」と言ったのだ。こう書くと実に実に生意気だ。ただ僕はTさんのことが大好きなので自分の素直な気持ちを伝えたのだった。Tさんはその後外国に行った(私がこの生意気な進言をした時にはすでに決まっていたらしい)。そしてTさんはそのことを覚えていてくれていたのだ。「お前は俺に影響を残しているんだよ」結構嬉しかったです。

最後にお土産のチョコを渡そうとすると「鈴木ぃー、お前何様のつもりだ。今日は俺がごちそうしてるんだぞ。なんでそれにお返しなんかする必要があるんだ。いいか、これ持って帰って奥さんへのお土産にしろ。業務命令だ」「は、はい!!」

10歳も上の人からエネルギーもらった感じ。

今日からも頑張ります。Tさんに「高校生の英文解釈」と言われないために。