金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「併記の効用」(2013年9月)

 

『大暴落1929』で村井章子さんの文章を使った「添削」を始め、最近は『自由と民主主義』に切り替えたのだが、実は厳密に言うと「添削」ではなく、村井さんの訳と自分の訳を併記しているにすぎない。

始めた頃はワードの「取り消し線」などを使って文字どおり添削していたのだけれど、添削作業そのものが時間がかかって面倒なので、

原文
自分の訳
村井さんの訳
コメント(必要に応じ)

を併記する形にして続けている。

で、上記の作業とは別に「添削」し終わったものを音読する。音読するのは主に原文と村井さんの訳なのだが、この方法には以外な効用があることがわかった。

それは時々自分の文字どおり「拙訳」を参照することで、自分の悪いクセを毎回発見する。音読する箇所はもう何カ月もたったものなのでかなり客観的に見える。

数年前の自分の訳を見て悪いクセを確認し、そのクセがまだ自分に残っているのを自覚して情けなくなることが多いものの、矯正にはすごくよい作業だなと思っています。

(後記)上記は8年前に書いた、パソコン上の作業の話ですが、今の僕は大学ノートを使って原文、訳文を手書きで書き写しています。テキストは『絶望を希望に変える経済学』(日本経済新聞出版)。訳者は村井章子さん。毎日10分です。こちらの方が文字通り身につく感じがします。形態は変われど村井さんの名訳とはもう10年以上ずーっとお付き合いさせていただいております。心から感謝です(2021年9月23日記)