金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

出版翻訳と「採算」(2017年12月)

実務翻訳の時は頭の中の3分の1ぐらいは採算を考えている。締め切りが比較的近い(長いものでも一カ月ぐらい)こともあって時間あたりWord数(と売上高)が常に頭の中に残っている。1カ月単位で売り上げも計算します。単価交渉もする。

しかし書籍は別だ。

最初から採算を考えることはない。ていうかそんなこと考えてたら(僕の場合は)できない。

半年とか1年とかのタイムスパンの中で、空いた時間を全て突っ込むことになる(だから今もやっている。おそらく31日午前まで書籍オンリー)。採算なんて考えていたらやってられないし、ここで儲けようとは思っていない。

自分を突き動かすのは、自己表現と自己実現への欲求、社会に何かを残したいという得も言われぬ情念、そして「これを世に出すのは俺しかいない!」という意地かな。特に今回は持ちこみ企画だったのでその気持ちが強かった。

だから僕は、出版を専業にしている皆さんが、どういう風にここを考えて仕事を進めているのかに興味はあります。だって採算とか時間給とか考えてたらいい仕事にならないような気がするから。本の場合。

でもね。

終わってからは別なのね。うっふん♥
ソロバンと欲得がぬくぬくと頭をもたげてくるのである。

今回もそう。出版契約の話、最初の打ち合わせでしたはずなんだけど覚えていないのでメールして聞きましたよ。

ブレイクアウトネーションズ』の時も、『世界でいちばん~』の時も、『Q思考』の時も、出てから数カ月は「取らぬ狸の」楽しい思いをしたもんです。だから今回もそうなる、オレ様は!アマゾンの順位とかちょっと上がると喜び、落ちると大いに落胆するんです(だいたいさ~、こんなのいつもいつまでも舐めるように見続けるのは著者と訳者ぐらいなんだと思いますけども)。でもこれまでは、ぬか喜びはすべてが夢まぼろし、幻想なのであった。もちろん納得はしてるんだけど。

だから本が出てからの数カ月、ちょっとはしゃいでも、自画自賛しても、許してね。

『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』

発売まで1カ月先ですが・・・
 訳書としては15冊目(共著、名前の出ない本も含みます)が出ます。
 
『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』
フレデリック・ラルー (著), 嘉村賢州 (解説), 鈴木立哉 (翻訳)
 ・経営者、経営幹部、経営企画部社員、人事部門担当者、管理職、人事コンサルタント経営コンサルタントの皆様向けの書籍ですが、今のような時代、「自分が活き活きするような素晴らしい組織ってどういう会社?」「働くってどういう意味があるの?」を模索している個人の皆様にもよい指針となれるのではないか、と思っています。
 ・2014年に出版させていただいた『世界でいちばん大切にしたい会社』で紹介された意識の高い資本主義(コンシャス・キャピタリズム)に基づく組織論、のさらに一歩先を行く組織論です。したがって同書を面白いと思われた方には「さらに面白い」と思います。
 ・企画から出版まで2年半。本当に苦労しました。本書出版にあたっては、編集者の下田さんはもちろんのこと、解説文をお寄せいただいた嘉村賢州さんをはじめ、ABD(Active Book Dialogue)勉強会参加者の皆様、他多くの皆様に大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。
 ひとつよろしくお願いします。

時差ボケ(?)(2017年12月)

今朝気分がいいから髭剃りを当てながら「時をかける少女」の主題歌を鼻歌で歌ってたら、「ウルサい!今何時だと思ってんの!!まだ4時半よ!!!」と怒鳴られ我に返った自分(恥)

(後記)今は起きるのが1時間ぐらい遅くなりました。(2021年12月27日)

『翻訳力錬成テキストブック』

『翻訳力錬成テキストブック』(柴田耕太郎著 日外アソシエーツ
https://www.amazon.co.jp/dp/4816926674/

 

2~3日に1度、毎回5~10分ずつ取り組んでいる。6月下旬から勉強を始めてほぼ半年。現在は「課題文2-2」(132ページ)だから4分の1ぐらい進んだことになる。旧版は買っただけでほとんど目を通さなかったので大きな進歩。このペースならあと2年ぐらいで読破できそうだ。

旧版は2004年。初版で買ったので(というか、おそらく初版で絶版になった)独立後2年たった時ぐらい。買ったときの印象は覚えている。「英文を1点の曇りもなく読み取る?・・・でここまで意訳する?」という拒否反応が大きかった。単なる趣味だろ、と思った。本が厚いのも気に入らなかった。

その後3年ぐらいこの本と著者が嫌いになっていたのだが、CTさん主催の勉強会に柴田先生が来られて(CTさんは柴田先生の翻訳教室に通っておられたのだ)、黒板を使って書籍通りの細かい授業をされたのだがそれはスッと頭に入って感動した。で、改めて旧版を開いたけど、やっぱり「ここまで意訳はないだろう。細かすぎだろう」という印象は変わらなかった。

それから10年。今年初めに新版が出ると聞いた。CTさんが関わっておられたという話も伺っていたし、使われている原典はあまり変わっていないのですが、レイアウトがスッキリしたのと、出典が明らかになるなどかなり見やすく、勉強がしやすくなったのも勉強が続いている理由の一つだと思う。

ただ、最近思うもう一つの「勉強が続いている」理由は、僕が少しは「翻訳力」がついたからかな?ということです。

昔は細かすぎる、というか原文から離れすぎていると思った柴田先生の訳。「出版物として読める」を狙って思い切って日本語を使うのだが、ちゃんと枠内に入っている。「意訳もここまではよい」というセーフラインを示してくれている、といいますか。特に「原文に即した訳」と「モデル訳」と比較検討するとそれがよく分かる。

 

とても素晴らしい本だと思う。

 

ただ、翻訳を始めたばかりの人は13年前の僕みたいに狙いがわからなくて放り出すかも。その意味では、学び初めは『誤訳の構造』『~典型』『~常識』や伊藤先生の『英文解釈教室』の方が良いような気がする。

 

3カ月ぐらい前だったかな、何気に本書をパラパラとめくっていたら、「あとがき」の最後のページに「協力 出典調査 CT(実務翻訳者)」とあった。「あ、やっぱり」と思ったらジワッときた。そして「柴田先生、ちゃんと書いて感謝していたんだ」と柴田先生のことも(ちょっぴり?)好きになりました。

 

ちなみに、今アマゾンを見たら読者のレビューがあった。厳しい意見だが、これはまさに13年前の僕の意見にほぼ等しい・・・ということはこのレビュアーさん、柴田先生の訳をちゃんと読まずに否定した13年前の僕と同じような、翻訳者のなりたてか、自分は翻訳をしたことのない語学屋さんかも。

TOEICができなかった時の、試験直後の感想(2017年12月)

今日のTOEIC。Part 5と6は15分、Part7の後半(176~200)を終えてあと30分で、「余裕だ」と思う間もなく、前半に入ったところで突如脳がエンストを起こした。

まるで、フルマラソンで調子よく25キロ過ぎまで走っていたのが突如30キロで足が止まったような感じ。

理由は分からない。ただ「まずい!」と思った瞬間に、時間勝負のテストなのでそこで負け。気持ちだけが焦って英文が頭に入らなくなり、時間だけが過ぎていった・・・。要するに英語力がなかったということ。
今回は受けなかったことにします・・・(強烈な敗北感)

(後記)この時の点数は890で、「できなかった~」と思っていたほど悪くなかったのでホッとした覚えがあります。なお、他にも書いていますように、僕はこういうライブ感(結果がどうなるかわかっていない時の感覚)を記録として残す方が、後になってから情報を都合良く整理して述べる(多くの合格)体験記よりも読者には役に立つのではないかと思っています。(2021年12月10日記)

tbest.hatenablog.com