実務翻訳の時は頭の中の3分の1ぐらいは採算を考えている。締め切りが比較的近い(長いものでも一カ月ぐらい)こともあって時間あたりWord数(と売上高)が常に頭の中に残っている。1カ月単位で売り上げも計算します。単価交渉もする。
しかし書籍は別だ。
最初から採算を考えることはない。ていうかそんなこと考えてたら(僕の場合は)できない。
半年とか1年とかのタイムスパンの中で、空いた時間を全て突っ込むことになる(だから今もやっている。おそらく31日午前まで書籍オンリー)。採算なんて考えていたらやってられないし、ここで儲けようとは思っていない。
自分を突き動かすのは、自己表現と自己実現への欲求、社会に何かを残したいという得も言われぬ情念、そして「これを世に出すのは俺しかいない!」という意地かな。特に今回は持ちこみ企画だったのでその気持ちが強かった。
だから僕は、出版を専業にしている皆さんが、どういう風にここを考えて仕事を進めているのかに興味はあります。だって採算とか時間給とか考えてたらいい仕事にならないような気がするから。本の場合。
でもね。
終わってからは別なのね。うっふん♥
ソロバンと欲得がぬくぬくと頭をもたげてくるのである。
今回もそう。出版契約の話、最初の打ち合わせでしたはずなんだけど覚えていないのでメールして聞きましたよ。
『ブレイクアウト・ネーションズ』の時も、『世界でいちばん~』の時も、『Q思考』の時も、出てから数カ月は「取らぬ狸の」楽しい思いをしたもんです。だから今回もそうなる、オレ様は!アマゾンの順位とかちょっと上がると喜び、落ちると大いに落胆するんです(だいたいさ~、こんなのいつもいつまでも舐めるように見続けるのは著者と訳者ぐらいなんだと思いますけども)。でもこれまでは、ぬか喜びはすべてが夢まぼろし、幻想なのであった。もちろん納得はしてるんだけど。
だから本が出てからの数カ月、ちょっとはしゃいでも、自画自賛しても、許してね。