金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

プロンプトの二の矢、三の矢(naturally translatable Englishを巡る生成AIとのやり取りの例)(2024年3月18日)

最初のプロンプト:The US economy is only one recession away from deflation.をnaturally translatable Englishに書き換えよ。
(注:この英語の出所は小倉弘著『英語難構文のトリセツ』(かんき出版)p285)

(1)ChatGPT4
The US economy is very close to experiencing deflation; it would only take one more recession to get there.

(鈴木の評価)わかりやすい。これを直訳するとわかりやすい日本語になる。

(2)Claude3

Here's a natural way to translate that sentence into English:

"The US economy is just one recession away from deflation."

プロンプト②
あなたは僕の最初のプロンプトを誤解している。僕が知りたいのは単なるonlyの書き換えではなくて、この文の全体で何を言いたいかだ。書き直せ。

Claude3の回答②

ごめんなさい、プロンプトの意図を誤解していました。この文全体で言いたいことは:

"The US economy is in a precarious state where just one more economic recession could potentially trigger a period of deflation."

つまり、米国経済が非常にデリケートな状況にあり、もう一つの景気後退が起これば、デフレ(物価下落)局面に陥る可能性が高いということを指摘しています。現在の経済状況がデフレに陥るリスクが高まっているという警告を示しているわけです。

プロンプト③:precariousをもう少しわかりやすい英語に書き換えよ。

Claude3の回答③

おっしゃる通りです。もう少しわかりやすい表現に直しますと:

"The US economy is in a fragile state where just one more economic recession could potentially trigger a period of deflation."

fragileの方がprecariousよりも一般的で、米国経済が非常にもろい状態にあり、景気後退がもう一度起これば、デフレに陥るリスクが高いということがより明確に伝わると思います。

(鈴木の評価と感想)こういうやり取りになったのは、Claude3からすると最初のプロンプトが曖昧すぎた(僕が尋ねたいポイントを絞り切れていなかった)からだろう。

あくまでも僕の印象ですが、いわゆる生成AI翻訳(生成AIを用いた翻訳)に否定的な方は、今の例におけるClaude3の最初の回答だけを見て「使えない」と断じている節がある。生成AIは「対話」によって問題解決を図っていくのだから、プロンプトの「二の矢、三の矢・・・」を放って自分の求めている回答に近づくまで論点を絞っていくことができるはずだ。そこが「自動翻訳機(アプリ)」と根本的に異なる点だと思う。

なお、『英語難構文のトリセツ』p285に出ていたこの英文の日本語訳は次の通り。
アメリカ経済はほんの一回不況になるだけでデフレに陥る」(同書p287)。

なお、naturally translatable Englishについては次の記事を参照のこと。

tbest.hatenablog.com

ご参考まで。生成AIのご利用は自己責任でお願いします(2024年3月18日現在)