金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

翻訳方向のグローバルスタンダードが変わるかも(2024年3月6日)

翻訳は元来、外国語を自国語に訳すことがグローバルスタンダードであった。その理由は、表現力の面で自国語の語彙が圧倒的に豊富であるため、と僕は理解しているのだが(もっとも、日英は例外とされてきた。日本語の語彙や文法構造が英米語とあまりに異なるため、ソース言語としての日本語を理解できる英米人が非常に少なかったためである)、AI技術の発展により、外国語と自国語の表現力の差は著しく縮小する。そうなると、翻訳における原文理解の重要性がかなり高まっていくのではないか?究極的には、

①ソース言語が母語、ターゲット言語が外国語の場合は、まずAIに原文をターゲット言語へ翻訳させた後、人がターゲット言語を解釈しながら調整/調整していき、最後の仕上げ(語句のチェック)をAIに任せる。

②ソース言語が外国語、ターゲット言語が母語の場合は、まず人が原文を理解した上で訳文を作成する。原文の理解を鮮明にするために、必要に応じてAIの助けを借りて表現の引き出しを広げる場合はあるが、表現の微調整と仕上げはあくまで人。

という形にするのが最も品質のよい翻訳を短時間で仕上げるベストな方法になると思われる。さてこの場合、表現の引き出しがAIを駆使して縦横無尽にできるようになった時に最も重要な要素は何か?それは原文(ソース言語)の理解ではないだろうか。

だとしたら、生成AIを使う翻訳を前提とした場合のグローバルスタンダードは、母語に訳す方ではなくて、外国語に訳す方になっていくのではないかな。なぜならば、ソース言語は外国語の場合よりも母語の方が原文への理解度がはるかに高いから。

このことを英語と日本語に当てはめれば、今後は日英翻訳を日本人が、英日翻訳を英語ネイティブが手掛けた方がよいということになる。

グローバル・スタンダードが変わっていくのではないだろうか?

以上はあくまでも僕の仮説とそれに基づく予想です。

tbest.hatenablog.com

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