金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

『英語難構文のトリセツ』。第一印象は相当いい(20ページまで読んだ最初の印象)

この本、最初の20ページに取り組んだだけだが(所要時間40分ぐらい?)、相当いい。

ただし、使い方を間違えると宝の持ち腐れになると思う。

クイズ形式なので、「この問題に正解した、しなかった」で終わってしまいかねない、そういう建て付けの本なのだ。

読者が翻訳者(英検1級、TOEIC900レベル)ということを前提とした場合、本書にはどういう意義があるか?読み進めていくと感想が変わるかもしれないが、今段階での印象を記しておく。

1.クイズのポイントは筆者の言う「難構文」、要するにひっかかりやすい英語の単文。つまり構文をきちんと理解するという点からは抑えておきたい内容。レベル的には、翻訳者であれば、問題と選択肢を読めば著者の意図までわかると思う。全問正解しながら復習をしていく感覚である。

2.重要なのはむしろ解説。最初の20ページまでだと、旧情報(重要度が低い)は前、新情報は後ろ(重要度が高い)という観点から倒置等に関する説明がなされており、知っていること、忘れかかっていたこと、曖昧だったことの確認ができる。その意味での「学び」が多い。

3.翻訳者であれば、「クイズを解く」のではなく、英文の日本語訳を紙に書いた上で正解を選び(選択肢は必要)、正解として記された和訳で添削するというプロセスをたどると効果が全然ちがうと思う。「構文分析」は重要点の復習になるはずだ(そのレベルである)。その意味から、「本書の使い方」で「自分で訳して、添削しながら学んでほしい」と一言ほしかった。この点の指摘がないのはもったいないと思った。

4.『難構文のトリセツ』という本書のタイトルは、いかにも軽すぎるという印象である。僕は、著者が『英文表現力を豊かにする 例解和文英訳教本』の小倉弘さんでなければ、単なるノウハウ本として無視していたと思う。もっともこの僕の感想は、僕の頭が古いか固いか古いせいかもしれない。参考書の表紙が漫画になる時代だ。こういう体裁の方が若者受けするのかもしれないけどね。

文教堂西葛西店にも置いてあったぐらいだから当分全国津々浦々の書店で手に取れるのではないかな。クイズを解くのではなく、翻訳の練習本として一度実際にご覧になることを強くお勧めします。

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