金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「嫌なお方の 親切よりも 好いたお方の 無理が良い」:出会った言葉(昨年~6年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(78)

(1)昨年の今日
誰にだってまちがうことがある。危険なのは、まちがいを犯すことではなくて、自分の見方に固執して事実を無視することだ。前へ進むにはつねに事実に立ち戻り、まちがいを認めなければならない。前を向くのはそれからだ。
(バナジー&デュフロー著『絶望を希望に変える経済学』村井章子著(日本経済新聞出版)p18)

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(2)2年前の今日
人工知能(AI)が普及し、デジタル化が進むにつれ、逆に暗黙知の存在が意識されている。
野中郁次郎私の履歴書―研究テーマ 今こそスミスの原点に 共感する他者 知の共創は続く」2019年9月30日付日本経済新聞

野中郁次郎(29)研究テーマ: 日本経済新聞

② 私は、大学時代、阿部謹也先生が授業中にこんな苦言を呈したことを思い出しました。「一橋大学の学生の知的レベルが劇的に下がったと感じたのは、生協にコピー機が導入されたときだった。……君たちはノートを写す、ということなど極めて退屈で無意味な作業だと思うのだろう。だが、皮肉なことに、君たちが侮る作業を機械に頼ることによって、実は君たち自身の質を低下させることに気づいていない」
(『AIに負けない子どもに育てる』pp184-185 新井紀子著、東洋経済新報社

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本日の朝刊を開いて①は漠然と分かった気がしたが、偶然②を読んでその意味が明確になったような気がしました。阿部謹也先生の授業は、教養部にいた2年間採ったがほとんど出席しなかった。朝早かったこともあるんだが、阿部先生、確か最初の授業でこうおっしゃったのだ。

「諸君、君たちには恐らく今、一番の自由な時間がある。大学に来て、そこに座って、私の下らない話なんか聞いている暇があったら、もっともっとやること、考えることがあるはずだ。それを探せ!」でも今は阿部さんの授業に出なかったことを心から悔いている(なお、成績は持ち込み可の試験またはレポートだったと思います。出せばAだった)。

もう一つ。大学2年の夏休み、当時僕が入っていた政治思想史のゼミ(当時は教養部にもゼミがあった)との合同合宿で飲みながら伺った話も忘れられない。「これから君たちが人を好きになった時のために必勝のアドバイスを教えよう。いいか、誰かを本当に好きになったら、一心不乱にその人を見つめ続けろ。片時も目を離すな。そうしたら相手はどこかで君たちと目を合わせる時がくるだろう。その瞬間にその人は君に恋をする。これは真理だ」。

余談ですが、野中郁次郎先生は阿部学長のアドバイスを受けた話が今月の「私の履歴書」に出ています。
(以下引用)旧知の間柄だった一橋大学学長の阿部謹也先生に、教員の候補はいないかと相談した。阿部先生は、1986年の学長選後、学生たちを批判するビラを配って学内で浮き上がってしまった私たちに「尊敬に値する」と声をかけてくれた唯一の人であり、恩義を感じていた。(野中郁次郎私の履歴書 ―北陸先端大へ 「場」で生まれる知を提唱 一橋大を退職、知識科学研究科長に」2019年9月24日付け日経新聞

野中郁次郎(23)北陸先端大へ: 日本経済新聞

(3)3年前の今日
 僕たちは上場した頃から道を誤った。いい店である前に、「優良企業」になってしまった。会社というのは大きくなると壊れる。だからある時点でいったん足を止めないといけない。外食人生50年。「経営って難しい」というのが率直な感想だ。
横川竟私の履歴書」本日付日経新聞より)

横川竟(29)再出発: 日本経済新聞

(4)4年前の今日
小説の楽しみのひとつは、全体の流れや構造とは関係のない細部につまずくことにある。
堀江敏幸「傍らにある人」より。2017年9月30日付日本経済新聞

(5)6年前の今日
嫌なお方の 親切よりも 好いたお方の 無理が良い 
(「折々のことば」 2015年9月30日付朝日新聞