金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

help 人(to) doの意味の違いについて(翻訳ストレッチの教材から)(2021年9月)

柴田耕太郎著『翻訳力錬成テキストブック』(日外アソシエーツ)p543に次の解説があった。

(以下「」内が同書からの引用。他の本も同じ)
「toがある場合とない場合の違い
toがある場合:間接的
I helped her to wash the dishes.
洗うのは彼女。自分はそのため洗い場に皿を運ぶなどして手伝った。
toが内場合:直接的
I helped her wash the dishes.彼女と一緒に皿を洗った」

何となく感覚的に分かるのだが根拠が示されておらず、手元の参考書で調べてみた。

(1)杉山忠一著『英文法詳解』(学研)p393
「help+目的語+不定詞で不定詞にtoがついていてもつかなくても意味にかわりはないという人は少なくないが、意味の違いがあるという説の方がよいと思われる。それによると、help him carry the load<toなし>では、彼といっしょになって荷物を運んでやることを意味するが、to carry とした場合は、それほど直接的に助けるよりは、楽に運べるように荷車を使わせてやる、といった援助の仕方を思わせる、というのである」
*「よいように思われる・・・、というのである」なんて、杉田さん、この説に自信がないのかしら。根拠や出典はないが、一応この文法書を出典としておく。本書は『翻訳力錬成テキストブック』の参考文献となっている。

(2)安井稔著『英文法総覧』(開拓社)P224
アメリカ英語ではtoなし不定詞を用いることが多い。また、toのある形とない形では、意味が微妙に異なることがある。to のない場合、例えば、He helped me carry it upstairs.では、『直接自分で手を下して手伝う』ことを意味し、to のある場合、例えば、He helpe me to carry it upstairs.では、間接的に、便宜を計ったと言うこと意味することがある」

(3)綿貫他『ロイヤル英文法』(旺文社)p447
「helpはくだけた文体では原型不定詞の方がふつう」とは書かれているが、意味の違いについては触れていない。

(4)江川泰一郎著『英文法解説』 (金子書房 改訂新版第64版)セクション187-C
「原形不定詞の構文はどちらかと言うと米語に多い」とは書かれているが、意味の違いについては触れていない。

(5)綿貫陽 マーク・ピーターセン共著『表現のためのロイヤル英文法』
P123「『60C to不定詞でも原形不定詞でもよい構文』(2)help[know]+目的語+(to)doの構文で、・・・目的語が長いとtoを入れることが多い」
p150「know とhelpは、目的語の次に原形不定詞もto不定詞も用いる……<help +O+原形不定詞>は<<米>>に特に多い」とは書かれているが、意味の違いについては触れていない。

・・・と微妙な違い。訳出するかどうかは別として、原形不定詞は「一緒に」、to不定詞は「便宜を図る」感じ、が正しいかも。