金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

最高の同時進行型「オーラルヒストリー」『将棋の渡辺くん』

「オーラルヒストリー」ってあるじゃないですか。政治の世界では御厨貴さんが有名だけど、『将棋の渡辺くん』って棋界最高峰の実力者の奥さん(伊奈めぐみさんは渡辺さんの奥さん)による空前絶後の同時進行型漫画オーラルヒストリーだと思う。
「将棋界には大山・中原・羽生っていう大名人の系譜があって、藤井くんもおそらくそれ。俺はそこには入らないんだよ。……羽生世代が年齢的に厳しくなって、おれが瞬間的に上に行っただけ。上の世代が落ちていないのに乗り越えられる力は俺にはなかった」
伊奈めぐみ著「将棋の渡辺くん」『別冊少年マガジン2020年10月号』)
公になることを承知でこういう発言をできる渡辺さんは立派。ただ、相手が奥さんじゃなければこういう発言を「今」言えないと思う。渡辺さんは取材にも協力的で、漫画の内容にも一切口を出さないそうです。コミックスは5巻まで出ています。
将棋を知らない人(僕も知りません)でも気軽に読めるので、是非。