金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

金子靖先生の翻訳教室についてー講師が「神」ではない教室の魅力(2015年6月18日)

昨日は金子靖先生の翻訳教室、2期目の最後の授業だった。ひいひい言いながら12回の課題を全部出し、出席しました。

川月現大( 風工舎代表)さんに紹介されて特別教室に参加してから1年。毎回何が何だかわからない原文を解読するところから始まり、月末になると仕事とぶつかって提出をあきらめかけたことも何度もあったが何とか完走できた。毎回「何でこういう風に英文を読めていなかったのだろう?」と自分の力のなさを思い知らされ、先生に指摘されて初めて「何でこんな簡単なことを調べていなかったのか?」と自らのいい加減さに呆れ続けた1年だった。

風工舎 ■ 会社概要

そういう失敗を重ねながら英文を読む姿勢がほんの少しは良くなったかな?という気がしています。

昨日の飲み会でも先生に申し上げたが、この教室が他の教室と全く異なると私が思うのは、「先生が『神』の存在ではない」ことを前提にして授業を成立させているという点に尽きる。

まず、私がこれまで受けた英語や翻訳の授業のほとんどは、先生がだれよりもその内容をよく知っているはずの、ある意味で手垢のついた教材が使われ、先生は(ほとんど)全てを知っているはずという暗黙的了解からスタートすることが多かった。金子先生の教室はちがった。毎回の教材に先生も我々と同じスタートラインから原文に取り組み、先生も苦しまれた箇所についての試行錯誤を(辞書をチェックするところから)教えていただけるのだ(昨日も「毎回教材選びが大変だ」と仰っていました)。

第2に、授業中に優秀答案をスクリーンで見せて頂けるという点。私が参加した多くの教室でも生徒の答案を見せるというスタイルはあった。しかしその時の講師の視線は基本的には「上から」(=神の目線で)批評していくことが多かった。これに対し金子教室では美点凝視。「私の試訳よりもずっといい」と仰る優秀答案だけを次から次へとみせていただける。全員の前で紹介されれば嬉しいものです。これがいろいろな意味で励みになる。

第3に「参加している生徒のレベルが超高い」ので、毎回他の生徒さんの模範訳から学べるという点。先生には失礼ながら、先生が全員に紹介される生徒の「その部分」の部分訳については、確かに先生より素晴らしく(?)本当に毎回ほれぼれとしながら必死にメモした(自分の経験で申し上げれば、「これは良い」と紹介されたその箇所の前後はボロボロだったりする)。

第4に教材の難しさ。何しろテキストを見た瞬間は「これは一体何について書かれているのか?」すらわからないものが多かった。しかも翻訳対象は毎回700ワードなのだが、たいていは短編の最後の部分なので、そこを訳すためには10ページ~30ページぐらいを読まないと訳せない。これがキツイのですが良い鍛錬になったと思う。

第5にこと細かい添削。700ワードほどの訳文に編集者の目で厳しくチェックが入る。皆の前での発表は美点凝視だが、先生の添削がほどこされているので個人別にはそれぞれ先生から批判されているわけ。つまり、悪い点は個人的に指摘されるので人前で恥をかくことはなく、良い点は皆の前で誉められるという、誠に生徒のプライドに配慮の行き届いた授業構成になっている。

第6に、重要ポイントが網羅された講義ノートをそのままいただける。難しい点についての外国人の先生方への質問メールとその回答などもそのままコピペしてくれる貴重な貴重なノート。これは何ものにも代えがたい貴重な財産だ。

そして最後に授業後の飲み会だ。先生のお人柄の破天荒さ(?)もさることながら、まあちょっと他には話せないようなことも含めて出版界や翻訳界のお話しを伺うことができる。帰宅時間の関係でいつも1時間で中座するのが惜しかったです。

まずは英語を正確に読めること。

そのことを改めて痛感させられた1年間だった。今後も特別教室は青山ブックセンターのホームページ上のアナウンスメントを見逃さずに潜り込むつもりです。
本当にお世話になりました。今後ともご指導をお願いします。
・・・というわけで、本日も皆さんにとって素晴らしい1日となりますように!!
(おまけ:後記)
これだけいただいて1万9440円(税込み)は安すぎだぜ。

翻訳勉強会の効用 - 金融翻訳者の日記

『翻訳教室』(柴田元幸著)の魅力 - 金融翻訳者の日記