金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

自分がぶつかった疑問の大半はChatGPTとの対話で解決できる(2024年5月2日)。

(以下は、僕の経験に基づく、ChatGPTに対する対処の仕方に関する、現段階での一つの仮説です)。

参考書や問題集(の解答)を読んでいて、どうしても理解できなかったり納得できなかったりする箇所ってあるよね(僕の場合は英文解釈本を学んでいる時によく出くわす)。

そういう時にはChatGPTに尋ねると解決できてしまうことが多い。なぜか?「わかるまで尋ね続けることができる」からだ、と僕は思う。学校や先生に対しては何度も何度も同じ質問をすることはためらわれる、でもわからない、尋ねられない・・・問題を放置する局面は日常生活には結構ある。生成AIにはその種の遠慮は無用だ。何回でも、どんなくだらない質問にも「答えてくれる」からだ。

経験的に言えば、自分が取り組んでいる問題であれば、これで多くの疑問が解決できる。もちろんその答えは間違っているかもしれない。しかし心配ご無用。ほとんどの場合、AIの答えが間違いであることが「わかる」からだ。なぜなら、その問いを尋ねる時点であなたには「この問題がわからない」という問題意識を抱いているからだ。正解にはたどり着けなかったとしても「そのAIの答えが間違っていそうだ」ということはわかる。その場合にはまた尋ねるのだ。腹落ちするまで。

これはアイデア出しの「壁打ち」とは違うのだけれど。こういう学習法もあるってことで。

英日、日英翻訳におけるChatGPTの特徴と役割(2024年4月30日)

(以下は、4月14日ウェブセミナーでお話しした内容を一部更新したものです)

1.英日翻訳
1-1 ChatGPTの特徴
英語の理解力は完璧だが、日本語の表現能力にはまだ課題あり
(ChatGPTの日本語能力は2024年4月15日に各段に向上したと思います)

1-2 ChatGPTの役割
①    英文理解のためのアシスタント
⇒(Naturally)Translatable Englishを駆使する
(Naturally)Translatable Englishとは、英語が日本語に翻訳される際に、日本語の文法や表現に非常に近く、直訳しても自然に感じられるように意図的に調整された英語の形式を指します。この表現は、英語の文が日本語に変換されたときにも自然で理解しやすいものとなるように設計されています。特に、二言語間での翻訳の精度と流暢さを保つために重要であり、文化的なニュアンスや意味的な正確さを維持しつつ、言語間でのスムーズな情報の伝達を目指します(ChatGPT。2024年4月14日に出力)。

②    表現のアイデア出し
同意語辞典、反対語辞典の代わりにもなります(裏取りは必要)

2.日英翻訳
2-1: ChatGPTの特徴
英語ネイティブとして完璧な英語が書ける

2-2: 日英翻訳におけるChatGPTの役割
翻訳者は監督、AIは役者(訳文出力係)
小津安二にょる俳優への演技指導、秋元康氏によるクリエーターたちのつくった多数の案を用いた「作詞」に似ている

3, ChatGPTを駆使してネイティブ並みに英語を理解し(英日翻訳)、ネイティブ並みの英語を書くために最も重要な能力は?

英文読解力

ChatGPTのアシストで英文を深く理解するには英文読解力が必要。
ChatGPTの作った英文案から文章の目的や文脈に合った英文を選択するには英文読解力が必要。(2024年4月14日時点での私の結論です)

『頭がいい人のChatGPT & Copilotの使い方』は、期待できる。 - 金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

tbest.hatenablog.comhttps://tbest.hatenablog.com/entry/2024/04/27/153502?_gl=1*5v9bgo*_gcl_au*MzYyNDE2ODQ0LjE3MTMzOTA3NzE. 

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『頭がいい人のChatGPT & Copilotの使い方』は、期待できる。

「もう1つのおすすめの使い方は、あなたが監督になって『時間をかければできるが面倒でやらない作業』を任せること・・・(中略)このときの、ポイントは、仕事の内容を『自分でも時間をかければできること』に絞ることです」(橋本大也著『頭がいい人のChatGPT  & Copilotの使い方』(かんき出版)p6)

「英日翻訳では翻訳者は監督兼主演俳優。ChatGPTはアシスタント。日英翻訳では翻訳者は監督。ChatGPTは役者(訳者)」という僕の実感に合う評価です。僕は翻訳者なので、ここで書かれていることのすべてが僕に役立つことは期待していませんが、新しい発見がありそうで楽しみです。ただ、本書は実際にChatGPTを使いながら読んでいかないと内容が上滑りして読者に身につかない可能性がある、というのが冒頭の十数ページを読んでの第1感かな。

感想は今後追加していきます。

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投資への向き、不向き(2024年4月27日)

たとえば僕は、自分が短期投資には向かないことを知っている(この40年間、いろいろ試しましたもの)。そして世の中の圧倒的多数の人が短期投資には向かないのではないかと思っている。

僕が

「FX投資は他人から金を借りてきて丁半バクチをしているのと同じなので、絶対に手を出してはいけない」

と言うのは、自分ならびに世の中の圧倒的多数の人々向けには正しいアドバイスだと思う(ちなみに僕は短期投資に向いていないことをかなり若い時に自覚したので、信用取引先物取引も、当然FX取引もしたことはありません)。

ところが、世の中には(超)短期投資、つまりバクチに「向く」人がいるんですよ。実際に勝ち続ける人は、確かにいる。

どういうところが僕と違うかはわからないが、目の付け所、タイミングの取り方、勝負への入り方、降り方の勘所を知っているのだ(特に降り方が大事なようです)。

問題はそういう「向いた人」の中に、「僕にもできたんだから他の人にもできるはず」と言って「僕にお金を払ってくれればやり方教えますよ」と勧誘するけしからん奴がいる、ということなんだ。しかも(その人だったからこそ可能だった)「実績」を示してね。

普通の人はこれに引っ掛かる。「自分にもできるのではないか」とつい思って(思わされて)しまう。

真似しようとしちゃだめですよ。できないから。

大事なことだから繰り返す。

バクチに勝ち続ける人は確かにいるんだけど、普通の人に真似はできない。だからバクチ的な投資には絶対に手を出しちゃダメだ。ましてや金を借りてやる(先物取引信用取引の買い)なんて論外だ。下手すると家を失くすぞ、あんた。

僕にできるのは、いったん投資したら投資対象から目を離し、平静な心持で日常生活に戻れるような、ファンダメンタルを重視した投資(投資対象の経営成績や財務体質の優れた会社に投資するということ)、あるいは目に見える事実(お店が近くて親しみやすい、とか商品やサービスがとても素晴らしかったから、とか経営者の理念や人柄に大いに共感したので応援したい、とかいったことです)を根拠にした、5年~10年という視野で取り組む長期投資なのだ。

誤解のないように言っておくけど、この長期投資にすら向いていない人もいますから。それは、例えば1月に積み立てNISAに申し込んで、もう焦っちゃっている人ような人です。もしこれを読んでいるあながそうであれば警告します。やめておこうよ、あなた。あなたはそもそも「投資」に向いていないので、他で楽しみやお金を稼ぐ方法を探してね。

人間の良し悪し、頭の良し悪しではなくて。あくまでも人の性格として。

1984年に証券会社に入って40年の、これが結論かな。

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つみたてNISAについて(2024年4月27日)

日経平均が大幅に下げたことで、1月に始まったばかりの新NISAに関していろいろな(主に否定的な)騒ぎがあった模様です。その報道やらSNSを見ていて思ったことを、昨日から今朝までにFacebookに書きました。以下はそのコピペです。

①上昇している時にはしゃぐのは楽しいからいいんだけどさ、ちょっと下がると「NISAで大損」とか騒がないでほしいなあ。だって「余裕資金」を「10年単位で」投資する仕組みですよ、これ

②ちなみに株式投資に関する僕の一番の自慢は、長男が生まれてしばらくしてからはじめた「るいとう」(NISAの前身)で複数銘柄を毎月コツコツ積み立てて5年ほどで単位株にし、その後ず~っと、つまり20年以上(もう25年ぐらい?)持ち続けてるってことかな。株価は8倍。単位株到達時点での配当利回りは16%という計算になる(今の時価で買っても2%超)。すでに配当だけで十分元が取れている。投資利回りは配当を考えなくても年率12%ぐらいじゃないかな。もう売れないよ。
成功のコツ?

そりゃあんた、「忘れてた」ってことです。

③ちなみに子どもたちの名義で続けた「るいとう」10年ぐらい続けて積み立てを止め、そのまま持ちっぱなし(単位未満株は処分しました)。
二人合わせて6銘柄で、当然パフォーマンスには大きな差が出たが、さすがに損になっているものはありません。一番いいのがさっきの8倍で、一番悪いのでも、ここ10数年の低金利の定期預金よりははるかによいと思う。どれも配当込みで考えればかなりの投資利回りではないかな。
要するに、「子ども預金」よりもずーーーーーっとよかったってことさ。

僕の世代の皆さんは年齢的にもう遅いかもしれないが、お子さんやお孫さんには、銘柄を厳選して「子どもが二十歳まで」とか考えて始めるにはいい仕組みだと思いますよ。NISA。
2,3カ月であれこれ言うものではないのよ、あんた。

③たとえばこういう考え方はあると思うよ。
(i)若い社員(たとえばウチの息子たち)が将来何かに使う必要が生じた時のために、預金の代わりに余裕資金をNISAで積み立てておく(実際、僕は彼らが社会人になった時、「なんでもいい。少額でいいからNISAで積み立てておけ」とアドバイスしました)。
(ii)結婚して子どもが生まれた時に、あるいは孫のために「子ども保険」あるいは「子ども預金」のつもりで、たとえば「彼または彼女が20歳になるまで毎月〇〇万円」積み立てておく(ウチはこれで始めたが、10年ぐらいたったところでさる事情(後述)で積み立てを止めた)。
②と絡めて思うのだが、「自分のため」というよりは「子や孫のため」の方が長続きし、結局はうまくいくような気がします。
実は僕自身もるいとうで積み立てていました。証券会社の社員は株式の売買にはかなり厳しい制約があるが、るいとうは短期売買ではないので普通に申し込めたからです。ずっと持っておくつもりでしたがマンションを買った時に頭金のために全株処分しました。当時10年ぐらい保有していた銘柄はすべてそこそこの利益を出して「よかったね」と言っていたものです。この時、子どもたちの持株は「子どもたちのものだから」と処分しなかったのですが、これを機に(だったか、保有銘柄が単位株になるのを待ってだったか、今となっては記憶がさだかではないですが)積み立てを止めました。ただ、毎月ためて20年経ったときの残高よりも累投の時価の方が高いので、結果オーライとは言えるかも。

ちょっと(というかかなり)残念なのは、私が処分した銘柄の中に、単位株のFR社があったこと。当時でも30%ぐらいの利益で「いい時に売れたね」と言っていたのだが、株価がその後50倍以上になるとはまったく予想できなかった。こどもの分にしてたらよかったのにね、と時々夫婦ではなします。

お断り:僕は元証券会社の社員ですが、証券会社の回し者ではありません。

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「ChatGPTを駆使してネイティブ並みに英語を理解し、ネイティブ並みの英語を書くために最も重要な能力は英文読解力」について(補足ノート)

4月14日ウェビナーの資料に

ChatGPTを駆使してネイティブ並みに英語を理解し(英日翻訳)、ネイティブ並みの英語を書くために最も重要な能力は?

英文読解力
(2024年4月14日時点での私の結論です)


と書いた理由について簡単に補足します。

(1)英日(英語から日本語への)翻訳においては、原文を理解できなければそもそも翻訳ができない、という点については別の記事で書きました。

それは国語力ではなく、英語力の問題 - 金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

ChatGPT(生成AI)は英文理解のための非常に有効なツールの一つであって、理解の困難な箇所に当たった場合には随時naturally translatable Englishに書き換えよというプロンプトを駆使すればよいと思います。

ChatGPTの翻訳力③:「最終的な日本語訳に最も近いと考える英語」(2023年11月15日へのフォローアップ質問)(2024年3月17日現在) - 金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

もちろん、その前提には紙とペンを使った地道な英文読解力を養うことが最も重要。それが「ChatGPTを駆使してネイティブ並みに英語を理解する(英日翻訳)ために最も重要な能力が「英文読解力」と書いた理由です。

(2)一方、日本語の原文を基に翻訳者がAIを利用してネイティブ並みの英語を生成する(日英翻訳)には、出力された英文を正しく理解し、評価する能力(英文読解力)が必要だと思います。適切な読解力がないと、語学的にはネイティブ並みの英語ができあがるとしても、英文の内容やニュアンス、文体や語彙が原文と一致しなかったり、複数の訳文間にそうした齟齬が生じ(つまり文と文のつながりが悪くなる)たり、といった「パッチワーク」翻訳が出来上がる可能性があるからです。その意味では、翻訳者の英文読解力を超える日英翻訳を仕上げることはできないということだと思います。

ChatGPTの活用:翻訳者の英語読解力を英作文力に転換する(2024年3月22日) - 金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

先日のセミナーではそういう意味のことを言ったつもりでしたが、何しろ発表時間が10分しかなかったので、念のため書き加えることにしました。

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(私にとっての)「翻訳ツールとしてのChatGPT(生成AI)」定義変更(2024年4月18日時点)

気が付いたのは昨日だった。英日(英語→日本語)翻訳のチェックにChatGPTを使っているのだが、そのコメントと修正案の日本語が妙にうまくなったと感じたのだ。そこでフェイスブックツイッター

ChatGPTいきなり日本語がうまくなった印象。気のせいかな?

と書いた。

今朝も翻訳チェックを使ってその印象がますます強くなったので、息子(会社でデータを扱っており生成AIの利用もしている)に「おい、日本語が格段にうまくなっているぞ。なんかあったのか?」と尋ねたところ、

「あれ、知らなかったの?日本法人設立に合わせて2日ぐらい前から日本語対応が始まったんだよ」。

やっぱりそうだったのか。

もちろん、この記事は知っていた。

OpenAIやMicrosoft、対日投資拡大 経済安保が追い風 - 日本経済新聞

なるほど、それに合わせて日本語サービスの質も上がったというわけだな。

実は4月14日のウェビナーの資料にはこう書いた。

(私にとっての)「翻訳ツールとしてのChatGPT(生成AI)とは

非常に頭の回転が速く、出力も迅速で、無尽蔵な知識を誇るが、日本語能力にはまだ課題の残る、英語ネイティブの、月額20ドルで雇えるアシスタント」

先週までのChatGPTの日本語表現能力は、たとえて言えばオスマン・サンコン氏並みの日本語力だった。しかし、現時点では現時点ではパックン(パトリック・ハーラン)氏と肩を並べるぐらいにはなっているというのが実感だ。ロールシャッハアドバイザリのジョセフ クラフト 氏(ご存知ない方はテレ東の「モーサテ」を見てね)にはやや劣る、という感じではなかろうか。

以上を踏まえ、私にとっての翻訳ツールとしてのChatGPT(生成AI)の定義を次のように変更する。

「頭の回転が非常に速く、出力も迅速で、無尽蔵な知識を誇り、日本語もかなり使える、月額20ドルで雇える英語ネイティブのアシスタント」

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