金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

『ChatGPTエフェクト 破壊と創造のすべて』(日経BP)に大満足(ただし索引がないのが残念)(2023年11月1日)

『ChatGPTエフェクト 破壊と創造のすべて』を読み終えた。素晴らしい本だ。

僕のようにほとんど予備知識もなく使い始めちゃった人間にとっては、①ChatGPTとは何か、②その歴史、③現在および将来への影響、④各国各社の導入事例、⑤規制環境等、ChatGPTの置かれた今の状況をざっと把握・確認するには格好の入門書だと思った。

特に第7章「今日から生産性を上げるずるい使い方」の中の深津貴行さんと尾原和啓さんとの対談からは、使ってみての自分の印象を確認できると同時に、これまで全く気がつかなかった具体的な方法論や角度(使う時の心構えや視点の置き方)が学べて有益だった。ここに書かれていることもおそらくあと半年もすれば「当たり前」の常識になるのだろうが、当面は保存して使えるできる良質な対談だと感じた。

7章の後の松原仁さん(東京大学次世代知能科学研究センター教授)へのインタビューには、「記号接地問題」について次のようなお話が出ていて目を引いた。

(以下引用)
「AIは実世界の物体を知らないので記号と実うつを結び受けられないという「記号接地問題」も乗り越えつつありのかもしれません。人間は赤い果実のリンゴを見たことがあるので「リンゴ」という文字(記号)を見れば、赤い果実を思い浮かべられる。しかしAIではできなという議論ですが、そもそも本当の「リンゴ」とは何か、という哲学的な話にもなってきます。

少なくともChatGPTは、その膨大なデータを使って、リンゴについてまことしやかな情報を語れるわけです。実際のリンゴを知らなくても、リンゴと言う記号と、リンゴという物体が事実上「接地」していると言えるのではないかと思います。情報の量で、壁を突破したというのが仮説ですね」(引用ここまで)
(「ChatGPTとの付き合い方」東京大学次世代知能科学研究センター教授松原仁氏。『ChatGPTエフェクト 破壊と創造のすべて』p340)。

本書は大満足な内容であったがただ一つ「索引がない」のが非常に残念だ。これだけの多くの執筆者でこれだけ豊富な情報をコンパクトにまとめだから、「索引」があれば本書の価値は2割はアップしたと思います。

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