金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「・・・しかし今は、10年とか20年、30年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている」(羽生善治さん):4月18日に出会った言葉

(1)2020年4月18日  ·
……国民の命に関わる非常時には政府は様々な強権措置を発動し国民に忍耐を強いる。ある意味、民主主義の危機でもある。リーダーは起こり得る事態を事前に説明し、国民の不安を最小限に抑え、政府への理解と協力を得なければならない。この時試されるのはリーダーの指導力・胆力、コミュニケーション能力だ。
(「経済気象台」2020年4月14日付朝日新聞10面)
本日の言葉:引用文には、さらに次の文章が続く。「ドイツのメルケル首相、英国のジョンソン首相、仏のマクロン大統領、皆動画で国民に直接メッセージを送っている。正面を見据え、自身の言葉で事態の深刻さを語り、国民に忍耐と協力を求め、前線の医療関係者に感謝し、先頭に立ち国民と共に戦う決意、そして全責任は自分が負う、と締める。言葉だけではなく表情や口調からも強いメッセージが伝わる見事な会見だった」。ちなみに昨日のFinancial Times(電子版)のトップは、マクロン大統領のインタビューでした。国内に蔓延しつつある孤立主義、自国中心主義を憂慮しつつ、今こそ連帯をと訴える発言を見て、こういう人をリーダーというのだろうと思った。
引用文は「翻って我がリーダーはどうか」と続くのだが・・・選んでしまった俺等が悪い、とはなかなか割り切れない日々です。

(2)2019年4月18日  
顔の見える犠牲者のバイアス
私たちは、理知的・民族的・文化的に近い人やモノに自然に共感を抱く。……このバイアスは公共政策にも影響をおよぼす。古い格言にもあるように、「一人の人間の死は悲劇だが、百万人の死は統計にすぎない」のである。……飲酒撲滅キャンペーンでは、年間の死者数を発表するよりも、はねられてフロントガラスに顔を突っ込む一人の歩行者の写真の方が効果を上げる(だが問題の深刻さを示す情報は、統計のほうが豊富である)。
(『良き社会のための経済学』p39 )

(3)2018年4月18日  ·
以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は、10年とか20年、30年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。直感でどういう手が浮かぶとか、ある手をぱっと切り捨てることができるとか、確かに個人の能力に差はある。しかし、そういうことより、継続できる情熱を持てる人の方が、長い目で見ると伸びるのだ。
羽生善治『決断力』(角川oneテーマ21)p170)