金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

2016年年初で予想されていた「テールリスク」と予想すらされていなかった「テールリスク」(2016年1月)

今朝のモーサテから①
「株価と為替の年末予想」
(1)株価強気派のポイント
・日銀の追加緩和(「新たな金融政策」)がある。
・年末まで緩やかなドル高(円安)基調が続くことに加え、2017年4月の消費税率引き上げを前にした駆け込み需要が望める。
(2)株価弱気派のポイント
・日銀は追加緩和をしない
・国内外でリスク回避的な動きが強まる。
・消費増税懸念と円高が企業業績の足を引っ張る。
(3)円安派のポイント
米連邦準備制度理事会FRB)は今年中に数回の利上げを行う。日米金利差が拡大しドル高/円安基調が続く。
(4)円高派のポイント
FRBの利上げはせいぜい1回。
・大統領選挙を控え、米国におけるドル高許容の姿勢に変化が起きる。
コメント
・リテールを抱え、常に強気でなければならない日経大手証券(大和)と海外投資家から資金引き揚げリスクを抱える外資系証券(パリバ)の典型的な姿勢が出た。
・ここから先は想像ですが、恐らく本日日本全国の証券会社、アセットマネジメント会社の朝の打ち合わせでは、細かさと深さの違いはあれ上記程度が出るのだろう。金融翻訳者であればこの程度の大枠は抑えておくべきだと思う。
FRBは初出は米連邦準備理事会、または米連邦準備制度理事会と訳すことが多いです。ちなみに日経新聞は前者、朝日新聞は後者で統一されている模様。モーサテはテレビ東京(日経系)なのに後者をとっています。

今朝のモーサテから②
「テールリスク」
フラフは本日付のFT(オンラインには見つからなかった)
株価予想のグラフの左から
番組では・・・
FRBの誤算
中国経済のさらなる減速
英国の欧州連合EU)離脱
をMCの池谷さんは「発生する確率は低いがもし起きると市場に大きな影響をおよぼすと思われるイベント」
と言っており、「テールリスク」という言葉を使わなかった。だから当面「テールリスク」を使わないか、使う場合には訳注を入れるのだろう。
・・・と金融翻訳者である私は考えるわけです。

(後記)「テールリスク」やFRBの表記に関する話を書くつもりでこれを書きましたが、実際この時に予想(?)されていたテールリスクのうち、ブレグジットが実現してしまい、市場は大混乱しました。そして2016年の年末は、この時点ではテールリスクにすら挙げられていなかった、言わばブラックスワン的なリスクが実現します。そう、トランプ大統領の誕生です。当時、オバマ大統領は、トランプという名前を聞いて「冗談は止めてくれよ」と言っていた頃のYoutubeが残っていました。この頃(2016年6月)にはまだ、まさか・・・と思っていたのですね。(2022年1月4日記)

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