僕の翻訳のスピードが遅い理由の一つは、「自分が1回目に書く日本語が歪んでいる」からだと思う。
ソースクライアント向けは少なくとも3回は見直す。部分的には読み上げソフトに5、6回読ませて直す箇所もある(ちなみに5,6回目は英語は見ていません)。最後は床屋さんの仕上げか彫刻のカットみたいになっていくんだけれども、そういう過程を通じて「僕の悪いクセ」がかなり矯正されることは、仕上がった訳文を見るとわかる。それなりに良い文章に仕上がっているからだ。5,6回も読むとかなり読者サイドの目を持てるので。
で、その度に思うんです。「最初からこういう日本語が書ければこんなに時間がかかることはなかったのに」と。
三島由紀夫が芥川賞の選考委員をやっている時は、選評を選考会後の打ち上げの席でサラサラっと書いて編集者に渡していたって言うけど、そういう域に少しでも近づくには良い文章を読んだり書き写したりするしかないんだろうなあと思います。
*ちなみにこの文章は一気に書き上げて1回読み直しました。