金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

松本道弘さんがエコノミスト誌を持っていた理由

過去のブログを見ると2018年だから、故松本道弘さんのセミナーに参加したのは亡くなる6年前だったことになる。会場は大手書店のセミナー会場で、当時松本さんが出版された書籍のプロモーションを兼ねていたのだと思う。

いよいよ80歳になろうとしていた松本さんは、2時間ぐらい立ちっぱなしで熱弁を振るわれた。残念ながら詳しい内容は思い出せない(当時出版された英語難語辞典の内容からだったと思います)。ただ松本さんが付箋がいっぱい張り付けてあるTheEconomist誌を片手に、「僕は今でもThe Economistをカバーツーカバーで読んでいます」とおっしゃったことはよく覚えていて、その時ふと思ったのだ。「あれ、TImeじゃないの?」と。

僕がTimeの購読を始めたのは44年前の4月、大学生協だった。松本さんの本に初めて触れたのは大学2年の初め頃ではなかったか。当然のごとくかぶれてしまった。松本さんは英語を柔道になぞらえて「英語道」を唱えておられた。「英語ができるようになりたかったら、とにかくTime誌をカバーツーカバーで読みなさい。それが最短の道です!」と言う言葉を信じて頑張りました。講談社新書で『タイムを読む』も出しておられた。その最後に彼のつくった『英語級段表』が付録でついていて、それを自分の机の正面に貼って目指した。松本さん主宰、2泊3日の「TImeを読む」合宿(「斬れる英語」合宿だったかも)にも参加した。参加者は全員日本人なのに、会場に入ってから2日後に会場を出るまで、二人相部屋の中も含めてオールイングリッシュの合宿だったのは、他の宿泊客からは奇異に映ったかも。

「自分も松本さんのようになりたい!」と思って、東京英語道場にも参加した。毎週土曜日、Timeの記事を一つ選んで、それについて毎週英語でディスカッションしていました。

しかし、確かに形は真似たけれども中身はお粗末だったと思う。

毎週Time誌が自宅に届くと気合を入れてカバーツーカバーを読んだ「つもり」にはなっていたが、実際には目を通しただけだったと思う。ただ、社会人になった後もずっと、一度も中断することなく購読を続けてきた。そのほとんどが積ん読であったことを告白しなければなりませんが。

たまたま昨日ある翻訳者の方とツイッター(”X”)上でやり取りしていて松本さんの「斬れる英語」のことを思い出し、思いは6年前のセミナーの光景に飛び、そういえば当時、「松本さんはなぜTimeではなくEconomistを振りかざしておられたのだろう?」とちょっと違和感を覚えたことを思い出した。でも当時は違和感だけだった。しかしその後必要があってEconomistの記事を調べ始め、図書館で何度も借りて読むようになって、しっかりと取材した、視点の長く広い、重厚な記事を載せ続けているEconomistの良さが自分なりにわかるようになってきた。Time誌の内容がかなり薄くなってきたことへの不満とも重なり「そろそろ切り替え時なのだろうか?」そう感じていた。そんな矢先、昨日のXでのやりとりを通じてハッと気が付いたのだ。

松本さんは、実はいつの頃からかTimeからEconomistに切り替えたのではないだろうかと。

あくまでも個人的な感想ですが。

tbest.hatenablog.com