今井むつみ著『英語独習法』(岩波新書)のpp146-147に、「多読学習の目的と限界/語彙を育てるには多読でなく熟読」と説明があるが、要するにこれは、いくらTOEICの勉強をやって900点取っても、TOEIC向けの勉強だけではいつまでたってもTIMEは読めるようにならないし、映画もわからないということをやや学術的に(要するに難しく)言っていることに他ならない。
TOEICレベルの文章を猛スピードで読めて、頭の中が「英語脳」になった気分でTIMEのエッセイを読むと、突如読むスピードが止まる感じがする。当然、『英文解釈教室』もすらすら読めない。―これはTOEIC900点レベルの人が実感する一種の壁だと思う。TOEICの勉強しかしていないとこうなる。
もちろんこのことはTOEIC(=多読多聴)の勉強に意味がないことを意味しない。いや一定レベルに(例えば900点ぐらいに)達するまで基礎的な勉強を続けることには大いに意味がある。ただ、語彙をさらに拡大し、英語に関するその他の周辺知識等を高める努力を意識的に別途行わないと英語の読解力はそれ以上は伸びないということだ(聴解力も同じ)。
この部分をはっきりくっきりと断言した点で今井さんはエライ(もっとも、「スキーマ」という教育関係者ぐらいしかなじみのない表現を用いて説明がわかりにくくなっている点はどうかと思います)。
同業者の皆様にはすでに明白のことだと思いましたが念のため。