金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

27周目に突入。

『表現のための実践ロイヤル英文法―英作文のための暗記用例文300』が最後まで来て、メモしてある日付を数えたら26個あった。つまり25日でこの文集を2007年以来27周したことになる。メモっていない日もあるはずだから実際は30周ぐらいだろうか。

これは『表現のための実践ロイヤル英文法』の付録。1回ごとの復習は5分。日本語を見て英語を空で音読し、英語を見るという作業をひたすら繰り返します。ここまで来ると日本語の最初の二文字ぐらいで大体英語が出てくる。冠詞とか定冠詞、前置詞などを間違えることもあります。それとなぜか「得意、不得意」(スラスラッと出てくる英文と、ちょっと考えちゃう英文)もあります。英作文の参考書は3冊使っているので3日に一度。4分で30~40英文復習できます。

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東京オリンピック期間中は英字新聞を読もう!(英語学習者向けのメッセージ)

授業を2回担当した大学生20人分の採点と講評今終わりました。12時間ぐらいかかった。

正直言って、今はこの仕事に生活がかかっていないので、コスト無関係で取り組めたけど、日々締め切りに追われていた10年前、あるいは5年前でもできなかったと思います(そもそも大学からそこまで求められていない)。

15年ほど前に翻訳学校の教師を1年やった時に学校側と揉めたのは添削料でした。

大学講師に生活がかかっている人の負担は大変だろうなあとつくづく思った次第。

さて、学生向けのコメントがたまたま今日終わったこともあり、次のメッセージを付け加えました。

「最後に一言。東京オリンピック期間中に英字新聞に目を通すことを強くお勧めします。英語の勉強になることは当然として、英米の選手の活躍ぶりは日本ではほとんど報じられませんからそれを読むだけでも学びが大きいと思います。そして何と言っても、コロナ禍に脅え、警戒しながらオリンピックを身近に観ている日本および日本人の反応や生活をどう報じているのか、という視点も得られると思います。例えばJRのたいていの駅に置いてあるThe Japan Timesはthe New York Times と提携していて結構NYTの記事が読めます。最高の教材になるはずですよ!」

英米の選手・・・」は「世界の・・・」と書くべきだったですかね。まあよしとします。

 

出会った言葉(昨年~4年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)⑱

(1)昨年の今日
Youtubeは笑いのツボが違う」  伊集院光さん
(2020年7月21日放送 テレビ東京「巷の噺」から)
伊集院さん曰く、「たとえば(タレントの)はなわ君はスタッフと一緒にいろいろな企画を考えて(Youtube放送を)やったが、結局一番受けたのは、はなわ家が焼き肉をしている様子をただ映しただけの放送で、百万回再生された」とのこと。お笑いに限らずこのオンラインを使ったあらゆる企画、イベント、催し、ショー、そしてキャラクターに言えるのかもしれないと思った。勝てる公式が見えないいま、演者(作り手)側はどうすればいいのか?下手な鉄砲も数打ちゃ当たる方式しかないのかも。

(2)2年前の今日
令和の日本は成熟国家である。
(「春秋」2019年7月24日付日本経済新聞

春秋: 日本経済新聞

平成日本が行き着いたのは、「問題がありそうな人」を「みんなで」バッシングして憂さを晴らす社会である。そんな社会の先には、見せかけの「正義」と「萎縮」が蔓延するファシズムしか生まれない。
(『平成時代』p226、吉見俊哉著、岩波新書

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*どちらが正しいのだろう?

(3)3年前の今日
 「人間の集中力は精々、数分間しか続かないから頭を休めて他のこと考えたりするのは構わない、しかし鉛筆だけは手に持って原稿用紙を見つめていろ」
山田洋次橋本忍さんを悼む 溢れるイメージ、100歳まで」 2018年7月23日付日経新聞最終面)

(4)4年前の7月22日

芸術家は朝、目覚めと同時に「さて、今日は何をつくろう?」と思案するが、職人は昨日も今日も明日もつくるものが決まっている
(昨日付朝日新聞読書欄、横尾忠則氏の『ある日の彫刻家』への書評から)

book.asahi.com



respectively のちょっと珍しい使い方(翻訳ストレッチの教材から)

(原文)In investigatigng how muscles repair themselves in this way, researchers have identified a pro-growth factor they call insulin-like growth factor 1 (IGF-1), and an anti-growth factor, myostatin, which respectively encourage and discourage muscle cell division and protein production. 

(訳文)筋肉がこのようにして自己を修復するプロセスを調査しているうちに、研究者たちはインスリン様成長因子1(IGF-1)と呼ばれる成長促進因子と、成長抑制因子であるミオスタチンを発見した。筋肉細胞の分割とタンパク質の生成を、前者は助長し、後者は抑制する。

(『英検分野別ターゲット 英検1級長文読解問題120』p60(原文)、P76(訳文))

respectively が普段よりちょっとズレた使い方がされていて珍しいと思った(覚えている限りでは僕は初めての例かも)のでメモ風に。

なお確認したわけではないですが、TOEIC(参考書類)の読解テキストはいかにもダミーな(普段僕らが読む新聞雑誌等の英文を易しくし、その過程で匿名化というかフィクション化している)英文で、内容からの学びの要素の少ない、味気ない文章だ。もちろんそういう文章をすらすら読めるようになることには大いに意味がある。新聞のビラや宣伝、商品説明書を読む意味はあるが面白くないのである。

それに対し英検1級本はリアル(文章のレベルはTIME誌並み)で、書かれている事柄は事実という印象です。だから「内容」から学べるし、読んでいて楽しい。

あくまでも試験の目的の違いであって、どちらがよい、悪いということではないので念のためご確認をお願いします。。

出会った言葉(昨年~4年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)⑰

(1)昨年の今日
リベラリズムは「誰でも他人に迷惑をかけない限り自由にふるまえる」という思想だ。だが他人に危害を及ぼすならば、自由の制限もやむを得ない。感染症の広がりを防ぐ私権制限は、リベラリズムで正当化できる。
(「チャラい政治哲学者」萱野稔人が考える硬派な国家論 哲学者が考えていること(3)(3)国家や社会 現実の中で考察「何を重視するか」問うコロナ禍 萱野稔人―2020年7月22日付け日本経済新聞

「チャラい政治哲学者」萱野稔人が考える硬派な国家論: 日本経済新聞

(2)2年前の今日
触れるということは「手当て」、人を癒やす力になる。
私の履歴書 中嶋常幸「大スランプ――賞金シード陥落 116位に 妻の支え・宗教で光見いだす」2019年7月23日付日本経済新聞

中嶋常幸(22)大スランプ: 日本経済新聞

(3)3年前の今日
伝統的なうそは、まず正しい現実があることを前提としてそれを隠すことを言う。一方、現代のうそは、「何が現実なのか」という基本自体を破壊する。
(「冷笑主義、社会を覆う?」 2018年7月23日付朝日新聞33面)

(3ページ目)紙面で振り返る、赤坂自民亭から加計問題まで2018年前半「政治的うそ」 | 文春オンライン

(4)4年前の今日
私は日本の詩歌を知ることは、日本語を最も深いところで知ることだと考えている。
『第四 折々のうた大岡信岩波新書)「あとがき」p189
第四 折々のうた (岩波新書) | 大岡 信 |本 | 通販 | Amazon

動詞knowについて(翻訳ストレッチの教材から)

(原文)I know no statesman in the world who with greater right than I can say that he is the representative of his people.

伊藤和夫著『英文解釈教室』(研究社)の例文。私の手元の本だとp163。本書で紹介されている訳は
(訳)自分が国民の代表であると、私よりも大きな権利をもって言うことのできる政治家を私は世界中に知らない。

テーマは「主格の関係詞」だったのですが、柴田耕太郎さんはこの文のポイントを「knowの意味」とし、「know:understandの理解力に比べ、knowは真実・事実の確信に力点がある」。
したがって「世界中に知らない」という伊藤訳は「直訳調」と指摘して次の修正訳を提案している。

(柴田さんの訳)自分が国民の代表であると、私よりも大きな権利をもって言うことのできる政治家を私は世界中にいないと確信する。

その上で、I know Kyoto.(何回も行ってよ~く知っている) I know him by name. (名前は知っている)“Do you know Mr. Brown?” ”No, but I know of him.”(うわさは聞いている)Do you know about him?(~について知っている)に分けて分かりやすく説明している。(詳しくは下のURL参照)。

『英文解釈教室』ノート 18 | 研究社 WEB マガジン Lingua リンガ

同じ内容は、『翻訳力錬成テキストブック』[例題2-9研究]know の意味(P177-178)に詳しく出ている。knowの機能はどの辞書にも普通に書いてあるが、列挙されている感じであまり体に染みこまない。その点柴田さんの説明が実にわかりやすく、特に否定文なので知識を整理するのに一石二鳥でよいと思った。

 

「コンピューターは計算機なのです」7月22日に出会った言葉

(1)2020年7月22日
発展途上国の経済)問題を研究する過程で、私たちは多くを学んだ。……事実から目をそらさず、見てくれのいい対策や特効薬的な解決を疑ってかかり、自分の知識や理解につねに謙虚で誠実であること。そしておそらくいちばん重要なのは、アイデアを試し、まちがう勇気を持つことだ。より人間らしく生きられる世界をつくるという目標に近づくために。
(アビジッド・V・バナジーエステル・デュフロ著『絶望を希望に変える経済学』村井章子訳(日本経済新聞出版)P7)
*翻訳ストレッチで原文と訳文の手書き移しを始めたばかりの書籍のまえがきから。著者の二人は2019年ノーベル経済学賞受賞。今日書き写した箇所ですが、今の政治家に聞かせてやりたい言葉だと思った。もちろん私たち自身の自戒の言葉としても。参考までに英語も書き写しておきます。We learned a lot in the process, and……which is to be hard headed about the facts, skeptical of slick answers and magic bullets, modest and honest about what we know and understand, and perhaps most importantly, willing to try ideas and solutions and be wrong, as long as it takes us toward the ultimate goal of building a more humane world. (Good Economics for Hard Times: Better Answers to Our Biggest Problems, Kindle No. 58-63/7213)
よい1日を!

絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか | アビジット・V・バナジー, エステル・デュフロ, 村井 章子 |本 | 通販 | Amazon

(2)2019年7月22日
AIの目覚ましい発達に目が眩んで忘れている方も多いと思いますが、コンピューターは計算機なのです。計算機ですから、できることは基本的に四則計算だけです。……(AIは)「あたかも意味を理解しているようなふり」をしているのです。
……
数学は、論理的に言えること、確率的に言えること、統計的に言えることは、実に美しく表現することが出来ますが、それ以外のことは表現できません。人間なら簡単に理解できる、「私はあなたが好きだ」と「私はカレーライスが好きだ」との本質的な意味の違いも、数学で表現するには非常に高いハードルがあります。これが、東ロボくんの成績が伸び悩んでいる根本的な原因だと言えるでしょう。
(『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』前半がP107、後半がp119)
*今日の言葉。この部分を読んで、初めて機械翻訳について考えた(今まで読んだことも、誰かのご意見を聞いたこともありません)。新井先生のおっしゃる通りなら、次の二つの解釈しか成り立たないのではないかな?
①我々の文章には「意味」やメッセージが込められている。ところがAIには文章の意味がわからない。したがって我々が扱っている文章の大半は機械翻訳できない。
②我々が目にする文章の大半は、一部の例外を除くと本質的な意味(著者のメッセージなど)がわからなくても「通じた気分になる」抜け殻のような文章である。したがって機械翻訳で翻訳可能。
どっちだろ?

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(3)2018年7月22日
長寿を目指してもしかたがありません。そもそも年齢は単なる結果です。
人間の価値は、生きた長さではなく「どう生きたか」にある――。
そしてどうなるかわからない未来ではなく、今を意識することです。
(『自分を休ませる練習』矢作直樹著、文響社、p177)

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(4)2017年7月22日
新聞コラムの読みのものとしては決して不自然ではなく、むしろある種の調子をも作り出して効果的に思われるような名詞止めの語法などが、本の形になると微妙な違和感をおこさせることがあって、そういう所は修正せざるを得ない。(中略)文章というものは、それが発表される場と生きた関係において結ばれている物だということを、こんなとき痛感する。
『第四 折々のうた大岡信岩波新書)「あとがき」p187

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