金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「広辞苑による『日本』の定義が『わが国』?!」:出会った言葉:昨年~4年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(240)

(1)昨年の今日
広辞苑(第四版)で……すぐ次のページに「日本」という単語が出ていて「わが国の国号」と説明してある。わたしは、あれっと思った」
多和田葉子著『言葉と歩く日記』(岩波文庫)pp64-65))
*他の辞書を見てみると、「にっぽん ―わが国の呼び名。→にほん」(デジタル大辞泉©Shogakukan Inc.)「わが国の呼び名。→にほん」(日本国語大辞典©Shogakukan Inc.)「にほんー『ひのもと』を音読した語で、我が国の称」(『新明解国語辞典 第7版』)。
むむむ、してみると日本語を学んでいるアメリカ人が日本の多くの国語辞典で「日本」を引くと「わが国」と出ちゃうわけか。むむむ。

(2)2年前の今日
「料理人は天性や才能によって創造的な仕事をするように思われています。だけどほんとうの料理人のすばらしさというものは、どれだけ努力をしてどれだけ実地の経験を積んだかで決まります」『料理人と仕事』(木沢武男著・モーリス・カンパニー)からの孫引き
(斎須政雄著『調理場という戦場 斎須政雄』(朝日出版社)p196)
*本日の言葉:月並みな表現ではありますが、やはり職人仕事の本質かなと。こういうのは誰が言ったかで説得力が異なりますね。

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(3)4年前の今日
正しいことや間違っていることを、良い、悪いと二分するのではなく、正しいことも間違っていることもごちゃ混ぜになった状態で、それでも何とかバランスを保っているのが世界なのだと、向田さんが教えてくれたのだ。
(小川糸「『あ・うん』とわたし」『向田邦子を読む』p136)

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「乗り遅れてしまったら、次のバスが来るまで待てばいいじゃないか」:6月12日に出会った言葉

(1)2020年6月12日  
乗り遅れてしまったら、次のバスが来るまで待てばいいじゃないか
(斎須政雄著『調理場という戦場 斎須政雄』(朝日出版社)p127)
*著者は、若い頃には他人に遅れたら大変だと必死になって努力していたが、「他人とちがうところが自分のよさかも」と思い始めた頃から仕事が楽しくなった、と。年齢や経験を積んだ結果かもしれません。昨日観た「パラサイト」は、「万引き家族」と似たようなテーマを違う切り口でえぐった映画だなと思いました。見終わった直後は「あ~なんでこんな映画を観てしまったのだろう」と後悔が半分ありましたが、時間がたつにつれてジワジワと良さが効いてきた感じです。
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(2)3年前の今日
どんな職業でもそうだが、研究者の場合にも、個人のふるまいにはその人の倫理観が反映される。個人として守るべき基本的なルールとして、次の二つを挙げたい。第1に、考えを議論するのであって、誰の意見かは問題ではない(けっして個人攻撃をしてはいけない)。第2に、研究室や会議の場で、同業者を前にして反論に窮するようなことを言ってはいけない
(『良き社会のための経済学』p98、ジャン・ティロール著、村井章子訳、日本経済新聞出版社
*欧米にはディベートの文化があるので批判イコール個人攻撃になりにくいと大学の恩師に教わったが、わざわざこういう問題を指摘しなければならないと言うことは、必ずしもそうではないのかも。

(3)4年前の今日
「基本的に、集団の中でいい恰好をしたい、目立ちたい、恥をかきたくない、どちらかといえば成果を独り占めしたいタイプは『ティール組織』には向いていないと思いますね」
(面白法人カヤック代表取締役CEO柳澤 大輔さん)
*昨日のセミナーではあまりにも多くのことを学びましたが、一番心に刺さった言葉はこれ(↑)かな。
さらに、「書籍の中ではレッドからティールに至る方向性を進化ととらえていますが、僕の感覚では、レッド、アンバー、オレンジ、グリーン、ティールとは組織の多様性に過ぎない。それぞれに合う職種や人々がいる」と。例えば「レッド組織は入社は簡単だが合わなければすぐ辞めてもらう(辞めざるをえなくなる)。でもティール組織は、いったん入ったら辞めてほしくないので、入り口でこの会社に合うか、合わないかを相当吟味する」とも。柳澤氏の考えは昨日紹介した『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』7月号「アジャイル組織」に掲載されていて「1週間限定公開」でウェブ上で公開されていますのでご関心のある方はどうぞ。私は時間のある時にメモをまとめます。実に刺激的だった~。
(*なお引用文は私にはこう聞こえた、ということです。文章責任は鈴木にあります)。

「オンナは『上書き保存』/オトコは『名前を付けて保存』」:出会った言葉:3~8年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(238)

(1)3年前の今日
 De-Sign=概念を壊してつくり直すこと
…そもそも「デザイン(design)」という言葉は、ラテン語のdesignare<デーングナーレ>を語源としているが、これは「分離すること、はっきりさせること」を意味する接頭語(de-)と「印・記号」(signum)から成り立っている。ここからもわかるとおり、行為としてのデザインには、対象を構成要素に分解したうえで、再び組み立て直すというニュアンスがある。デザインとは組み替えそのものだと言ってもいい。
(『直感と論理をつなぐ方法』pp176-177、佐宗邦威著、ダイヤモンド社
*今日の言葉:デザインとは無から有をつくり出すことと思っていた自分には、デザインとはそもそも組み替えなのだという考え方はハッとさせられた。IPhoneの技術はすべて他社の技術を組み合わせたものという話をどこかで読み、あれは特殊なデザインと思っていたが、本当はそちらが本筋だったのだね。目から鱗でした。

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(2)4年前の今日
百年後
  21世紀は、どんな世の中になるのか。米国の専門家たちの予測によれば、人間はプラスチックの自動車に乗り、プラスチックを食べるようになると新聞に紹介されていた。人類は石から銅へ、銅から鉄へと進歩してプラスチック時代にはいり、きっと栄養たっぷりで、おいしいプラスチック料理ができるようになるのだろう。
  これは「進歩」と称すべきものなのかどうか、筆者の貧しい想像力では判断しがたい。しかしわれわれはプラスチックに囲まれて、理想社会に近づいているのだという信仰は、とても持ち合わせていない。大正9年1920年)、『日本及日本人』という雑誌が「百年後の日本」を特集した。当時の知識人にアンケートしたものだが、55年後の今日、読み返してみておもしろい。
  「一寸先は闇、いわんや百年後など夢想だに及ばざるところ」といった回答もある。一寸先の分からないのは、いまの政界の話だけではないらしい。この中で、科学技術についての予言は、百年を待たずして実現されてしまったものが多い。たとえば「芝居も寄席も居ながらにして見、聞きできる対面電話」「土を化して米となし、草を変じて肉を作る法」などは、いい線をいっている。
  だが人間自身の「進歩」についての見通しには、悲観的なものが多い。「女権は拡張すれど、一般女子の貞操感いちじるしく低下す」と、女学校長は心配している。評論家正宗白鳥は「みんなが浮かれ出す世になる」という予言だ。「人間がだんだん幸福になってゆくかどうかは疑問」というのは、作家菊池寛である。
  社会運動家山川均の言葉は、心を打つものがある。「百年後の日本は、百年後の予想を忌憚なく答えても、縛られる心配のない世の中になるでしょう」。同じような言い方で「21世紀の世界は、人間が未来を語るときに、今ほど暗い疑いを持つことのない世の中になるでしょう」と予言したい。(1975年10月13日)(「百年後」『深代惇郞の天声人語』p69)
*今年は、このエッセイが書かれてから43年ですね。
(後記:*今年は、このエッセイが書かれてから47年です。2022年6月11日)

(3)5年前の今日
お父さん、コミュニケーションって、相手の話に耳を傾けることから始まるの。それが出発点だとアタシは思う。
(妻より)

(4)8年前の今日
オンナは「上書き保存」/オトコは「名前を付けて保存」
(翻訳者仲間のMさんより)

「からだはこの世での借り物。 いつか返す日まで、 大切にする」:6月10日に出会った言葉

(1)2019年6月10日  
「お子さんが味噌汁をかき回したり池に石を投げたりして波を立てていても、黙って見守ってください。自然の不思議さに夢中になっている時間を大切にしてあげてください」小松栄一郎さん(マックスプランク宇宙物理学研究所所長)
(「My Story」2019年6月9日日付日本経済新聞

(2)2018年6月10日 
からだはこの世での借り物。
いつか返す日まで、
大切にする。
(矢作直樹著『自分を休ませる練習 しなやかに生きるためのマインドフルネス』p46)

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「早い」ことがよいとは限らない。 「先送り」にした方がよいこともある。:6月6日に出会った言葉

(1)2020年6月6日
やり直しを嫌ったら、よい仕事はできない。
三浦綾子「北国日記」『〆切本』(左右社)p248)

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(2)3年前の今日
「……私たちは賢いから数学を使うのではなく、十分に賢くないから使うのである。とはいえ、十分に賢くないと気づく程度には賢い。私は学生たちにこう言った――この点を認識することが、貧困や低開発について強硬な意見を言いたがる人たちから君たちを区別するのだ、と」ダニ・ロドリック(ハーバード大学経済学教授)
(ジャン・ディロール著『良き社会のための経済学』村井章子訳(日本経済新聞出版)p129)
*今日の言葉。謙虚であることを自負せよということだろう。それにしても村井章子さんの翻訳は、それが翻訳であることを感じさせないほどに完成された日本語だと思う。書き写すたびに目指す高見を実感する。

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(3)2018年6月6日  
「早い」ことがよいとは限らない。
「先送り」にした方がよいこともある。
(『自分を休ませる練習』p27)

「ファシズムは、誰もが同じ事を同じように語る事態を『さりげなく成立』させる制度」:6月4日に出会った言葉

(1)2020年6月4日  
仲間と同じようにコーヒーを飲んで、仲間と同じように「あぁ、苦いなぁ」と感じている。でも、その苦いと感じたことに対して、必ず別なことを考えているのです。
コーヒーを媒体にして、別のことを考えている。そういう人がクリエイターなのだと思います。
(斎須政雄著『調理場という戦場 斎須政雄』(朝日出版社)p127)
*天才でなくても、心掛け次第でこういう姿勢を保つことはできると思います。勇気づけられました。

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(2)2019年6月4日  
ファシズムは「人に沈黙を強いる制度」のように言われるが、実は逆で、誰もが同じ事を同じように語る、そういう事態を「さりげなく成立」させる制度だと評論家(四方田犬彦)は言う。
(「折々のことば」2019年5月29日付朝日新聞より)
*本日は天安門事件からちょうど30年目の記念日だそう。上のような引用が自動的に消されてしまう世の中にならないことを祈る

「誰でも急に大人になったのではなく、子どもの時間からつながって今日があります」:出会った言葉:4年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(234)

4年前の今日
誰でも急に大人になったのではなく、子どもの時間からつながって今日があります。子どもと大人の両方の目線を手に入れたからこそ、大人が絶対に正しいなんてことはないとわかったし、子ども時代の自分が抱えていた大人への不満も肯定したい。
(「大人だって味方になる ― 思春期世代から離れずに書く:辻村深月が語る仕事」2018年6月3日朝日新聞22面「仕事力」)

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