金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「カネのことをあれこれ思案するのは、いつだってひとつの作品を書き終えたあとのことなのだ」:出会った言葉:昨年~4年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(233)

(1)昨年の今日
「たとえば避難所に100人の人がいて、ある方法で99人がポジティブになったけど、一人はうまくいかないとする。そのとき、その一人を無理矢理99人に引っ張ってくるのではなくて、その一人に寄り添う」(ドラマ「心の傷を癒やすと言うこと」脚本担当 桑原亮子さん。柄本佑さんのセリフ「(心のケアとは)誰も独りぼっちにさせへん、てことや」について)(安克昌著『心の傷を癒やすということ』(作品社)p450)
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(2)2年前の今日
「何をやってもいいし、いつも楽しいけれど、ある水準以上の人間性や技術を宿していなければ、ここにはいられないよ」。そういう暗黙の了解もある。この雰囲気がいいんだよなぁと思って仕事をしていました。
(斎須政雄著『調理場という戦場 斎須政雄』(朝日出版社)p110)

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(3)3年前の今日
やむを得ない事情のひとつやふたつは誰にでもある。それでも、物事を変えることはできる。すこしの幸運はたしかにあったほうがいい。だけど、それは必要不可欠のものではない。
(「九十九の憂鬱」 東山彰良 2019年6月2日付日本経済新聞最終面)
*今日の東山さんのエッセイでは、次の一説にも共感した。「カネのことをあれこれ思案するのは、いつだってひとつの作品を書き終えたあとのことなのだ」。

(4)4年前の今日
外国語をめぐる日本の状況にはチクリと皮肉もきかせる。「英会話に熱心な人は英語話者のいうことに従順」と言われれば、ぎくりとする人もいるだろう。外国語を「武器」に例える風潮について、「ロシア語を教える自分が『死の商人』みたいで嫌な気分になる」とも。
(「『物語を忘れた外国語』 黒田龍之助著 遊ぶほどに面白くなる道具」2018年6月2日付日本経済新聞読書欄)
(参考)

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ビジネスに役立つ経済金融英語 第11回 ーPandemicからEndemicへ |

皆さんもそろそろ宴会もコロナ前の水準に戻りつつあるでしょうか。
今回は、意外と誤解されているEndemicについての記事を書きました(実はアメリカ人も誤解しているので要注意、という話です)。

Epidemic、Pandemicの違いとともに整理しておくよい機会かも。よろしくお願いします。

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「『単純化しないと理解できない』なんて誰が決めたの?」:出会った言葉:昨年~4年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(232)

(1)昨年の今日
職場でも学校でも政治の話題を持ち出す人間は敬遠されることになっている。そのくせ投票には行けという。バカにすんな。
小田嶋隆著、武田砂鉄撰『災間の唄』(株式会社サイゾー)p169)

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(2)3年前の今日
「『単純化しないと理解できない』なんて誰が決めたの? 複雑なものを複雑なまま吸収し、自分の理解をつくっていく――そんなことは赤ちゃんだってやっているのに」 佐山弘樹氏(ニューヨーク州立大学ビンガムトン教授
(『直感と論理をつなぐ方法』佐宗邦威著、ダイヤモンド社、p141)
*本書には発見が多い。
それは僕に「デザイン思考」の脳が備わっていないからなのだろうが、今日の言葉を読んで(この言葉は佐宗さんご自身がハッとさせられた言葉として紹介されている)、この本の魅力の一つは、著者である佐宗さんご自身の発見がちりばめられているからではないか、と思い始めた。

まあ、何しろ僕の目には新鮮な視点/提案ばかりで毎日読んでいて嬉しくなる・・・こういうのって、毎日5分程度の音読だから気付くのであって、一気に読むと分からないかも。「翻訳ストレッチの効用」かな?なんちゃって。

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(3)4年前の今日
祈るべき天とおもえど天の病む  石牟礼道子
(『第七 折々のうた大岡信 (岩波新書)p125より)

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「私についてこないで、という人ほど、指導者に向いている」:5月30日に 出会った言葉

(1)2023年5月30日

「人は自分が被害者であることには敏感だが、加害者であることには気づきにくい」坂元裕二さん
(「カンヌ、手取り合った快挙 受賞の坂元さん、是枝監督と会見」2023年5月30日付朝日新聞

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(2)2019年5月30日  ·
教えることはない、私についてこないで、という人ほど、指導者に向いている気がする。
(「逆風順風 私についてこないで」2019年5月30日付日本経済新聞スポーツ面)
*今日の言葉は、引退を発表した巨人の上原浩治さんと大阪なおみさんに関する記者の方のエッセイ。最近、「俺がアタシが教えてあげる」という人が多いよね。

(3)2018年5月30日  
速くできる、手が抜ける、思い通りにできる・・・ありがたいことですが、困ったことに、これはいずれも生き物には合いません。 中村桂子
(「折々のことば」27日付朝日新聞より)

落ちたマスク

昨日の午後、妻と近所の公園を散歩していたときのことだ。

前を3歳ぐらいの男の子とそのお父さんが手をつないで歩いていた。お母さんはその前を歩いていたのではないかな。

父親の回りでキャッキャッと走り回っていた男のこのポケットから何かが落ちた。たぶんマスクだと思う。お父さんも子どもも気がつかずに歩を進める。

とっさに「あ、落ちましたよ!!」と叫ぶ僕。振り返る父親。

すぐに拾い上げようとして手を引っ込めた。それはマスクだったから、というよりもコロナを意識したのだと思う。

「たぶんお子様のマスクだと思います」そう言って自分の足許を指す私。父親は近づいてきて「ありがとうございます」と言ってそれを拾い上げ(妻によると)「ほらほら、マスクが落ちちゃったじゃないか」と言って子どものポケットに突っ込んだそうだ(僕は父親が近づいてきたことを確認してそのまま歩いたのでそのシーンを見ていなかった)。

今から考えれば、落ちたのがマスクだったので、コロナと関係なく僕は拾わず、指さすだけにしたと思う。

拾ってあげなかったことが何か悪いような気もしたが、「やむを得なかったよな」と言ったら妻がこう言った。

「そもそもお声がけしてよかったのかしら」
「へ?君はむ、無視すればよかったって言っているのか?」
「だって、あのお父さん、お父さん(僕のこと)から声をかけられて、あわててお子さんのポケットに落ちたマスクを入れたのよ。ってことは次に子どもにさせるのは『あのマスク』ってことになるじゃない」「そりゃそうかも」

「もしマスクがなければ予備を出したはずでしょ。小さなお子さんを連れて歩いてるんだから、当然用意してあるはず。
・・・で、思うのよ。もしかしたら、そこに落としたままにしておいて、あとで公園の掃除担当の方にお任せした方がよかったかもしれない」

「あたしね、お父さんがお声がけしたことが悪いって言ってるんじゃないの。純粋に善意から出た言葉や行為が、かえって相手に迷惑になっちゃうこともあるかもしれないって思っただけなの」。「う~ん」

ちょっと考えてしまった。

「自由は置物のようにそこにあるのではなく、現実の行使によってだけ守られる」:出会った言葉:3~5年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(231)

(1)3年前の今日
自由は置物のようにそこにあるのではなく、現実の行使によってだけ守られる――丸山真男
(「春秋」2019年5月29日付日本経済新聞

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(2)5年前の今日
日本の親は「人に迷惑をかけてはいけない」と教える。インドの親は「お前は人に迷惑をかけて生きているのだから、人のことも許してあげなさい」と教える。
(私がフォローしている方のツイートより)

「幸福とは心が平静なことである」:5月28日に出会った言葉

(1)2021年5月28日  
スミスにとって幸福とは心が平静なことである。……心の平静を得るためには、最低水準の収入を得て、健康で、負債がなく、良心にやましいところがない生活を送らなければならない。しかし、それ以上の財産の追加は幸福を大きく増進するものではない。以上がスミスの幸福論である。(堂目卓生著『アダム・スミス』(中公新書)pp79-82)

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(2)2020年5月28日  
本質以外は何だか分からない人。だけど、いつも垂れ流しで自分を出している人。ピュアの純度が高すぎて、あまり理解されていない。世俗的なところがなく、レストランを通して社会奉仕をやっているようでした。(著者が3店目に働いた三つ星レストランのオーナーについて)
(斎須政雄著『調理場という戦場 斎須政雄』(朝日出版社)p90)
*著者がフランスで勤務した3店目。三つ星ホテルのオーナーに対する著者の印象です。著者の店作りに圧倒的な影響を及ぼした、最も尊敬するレストラン経営者として描かれている。作業服を着て掃除ばかりしているので、オーナーを訪ねてきたお客さんから「オーナーを呼んできてくれ」と呼ばれることも頻繁にあるとか。『ティール組織』に出てくるフランスの金属加工メーカーFAVIのCEOゾブリスト氏にそっくりだと思った。

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(3)2019年5月28日  
「持ちきれないほど長い箸で食べるには、目の前の人に箸を渡し、口に運んでもらうしかない」――筆者が税理士の宇野勝詞さんから聞いた話
(交遊抄「心配してくれる恩人 吉川隆」2019年5月28日付日本経済新聞

(4)2018年5月28日 
伝説的な計算機科学者フレデリック・ジェネリクは、「言語学者を一人クビにするたびに、音声認識システムの精度が上がる」と語ったとされる。この発言は、人口知能の開発がルールに基づくアプローチから統計的アプローチに移行した理由を端的に説明しているといえよう。
(『プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?』p130より)

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