金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

雑草魂

昨日「同期生」というドキュメンタリーを2本見た。そのうちの1本が将棋の「昭和57年組」の話。昭和57年に奨励会入りした森内名人、現役棋士(7段)(プロにはなれたが中々出世できず悩んでいる)、年齢制限(26才)で奨励会を強制退会(つまりクビ)後働きながら、アマチュア棋戦で優勝し特例で20年ぶりに奨励会入りを狙うサラリーマン(46才)の3人の今を追う番組で色々な意味で感銘を受けたのだが、なかでも今年の名人戦で羽生三冠(この人も昭和57年組の同期生)を破った一局で指した新手についての森内名人のひと言を聞いた時の現役棋士7段の言葉が印象に残った。

森内名人はその手について「勝負の決め手になったかどうかは別として、本譜においては打つ価値があった」と言ったのだが、それを聞いた棋士が「自分がいかに勝負に拘泥し過ぎていたか」が(奨励会入りして)30年たって気付かされた、そして「もう一度上を目指す」と言ったのだ。

もう一つ勇気づけられた一連のシーン。

Mさん(元奨励会員)は某社で経理課長を務めながら(勤続20年)全国アマチュア選手権の東京都予選に出場。プロになるために。
試合前に残業で夜10時に帰宅してパソコンの前に座ってオンライン将棋で練習するMさんを見て奥さんのひと言。

「あそこまで好きになれるものがあるのは、正直言ってうらやましい」

試合当日。決勝リーグ1歩手前で学生選手権全国3位の24才に敗れる。
その後のMさんのコメント。「全然やる気は失せてません。まだまだ挑戦です。まだやれます」。

ここまで、という区切りのない、引退は死ぬときと思っている僕のようなフリーランスにはこういう雑草魂がジンと来る。

示唆の多い番組だった。