金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

『基本文法から学ぶ英語リーディング教本』は良書。ただし初心者向きにあらず(2022年4月。読み終わり)

1.2022年1月8日
以下は、昨日ふと思い立って書いたツイッターへの投稿である。ちょうど半分ぐらい読み進めたところなので、今段階の感想を書いた(一部加筆修正しています)。

(ここから)
『基本文法から学ぶ英語リーディング教本』は、英語の上級者(準1級程度)が中学レベルまで戻って学び直すには非常に優れた教材だと思います。基本的なことでもこれまで曖昧だったところが明確になるなど勉強になり、私は毎日楽しく読み進めています。

ただし本書は読者を選んでいます。本書を読み進めるためのハードルは高く、英語が中学生レベルの人が本書を読み始めても、大半の人は書いてあることの意味がまったくわからずに100ページもいかないうちに投げ出すだろう、というのが僕の印象です。

その意味で、本書の帯にある「誰でも原書が読めるようになる」や「はじめに」の「これから英語を勉強する人でも大丈夫です」はミスリーディングだと判断します。初心者の方は帯や「はじめに」、アマゾンの書評を盲信してクリックするのではなく、書店に出向いて実際に本書を手に取り、できれば30分~1時間ぐらいかけて最初からLesson2(p20)ぐらいまでを立ち読みした上で、買うか買わないかを決めるのがよいと思います。(ここまで)

なお、現時点(2022年1月8日)でのアマゾンの書評は、上級者と思われる皆さんの好意的な感想しか見当たらない。本書が(帯の示唆するように)本当に初級者向けなのであれば、英語初級者の感想がいくらかはあっても然るべきだがそうなっていないのは、まさに本書が「初級者向けではない」ことを証明しているのではないだろうか。

以上を踏まえると、本書のタイトルは『基本文法から学び直す英語リーディング教本(上級者向け)』の方がその性格を正しく表していると思う。

1週間ほど前には否定的な書評があったが、なぜかすでに削除されている。ややキツい書評だったけれども、内容的には僕が今朝書いたツイッターの書き込みの後半部分に近い(つまり言い方はともかく、僕は彼の意見のうち半分ぐらいはまともだと思っていた)。

繰り返しになるが、『基本文法から学ぶ英語リーディング教本』は、上級者向けの英語学び直しテキストとして大変優れていると思う。読めば読むほど面白い。しかし初心者向きではない。ところがタイトルや帯に引き込まれて、本書を手に取ることもなく「中身をよく吟味せず、自分に合うか合わないかをよく考えずに買ってしまう」人がいるのではないかとの危惧を拭いきれないのである。

書評というものは本来読了してからすべきもので、本書についても一巡してから(毎日10~15分ずつメモしながら勉強しているので、あと3~4カ月はかかるだろう)と思っていたのだが、何しろ現時点でのアマゾンの書評が好意的なものばかりになってしまったので、バランスを取るために今の印象を書き残しておこうと思った次第。最終評価はそれまで留保することとし、現時点での評価は中立(☆☆☆)とする。

2.2022年4月3日に「あとがき」まで読み終わった

終わっての感想は基本的に変わりません。
英文を「品詞分解」して、各語の役割や語と語の関係を厳密に考え抜くというアプローチは、英語の上級者にとっては、いつの間にかあやふやになっていた文法知識を復習するきっかけを与えてくれるという意味で、大変ためになると思います。私は現在、2巡目に入っています。

ただし、中学生をはじめとする英語初級者にこの本を読み通すことは無理だと思いますし、本書に最初から最後まで目を通しても、Appendixの英文を自力ではまず読めないでしょう。せいぜい、本書のやり方に沿って書かれている著者の解説に助けられて何とか理解するのが関の山。本書は中学生の参考書売り場ではなく、大学生協に「英語学び直しのためのテキスト」として置かれた方がよい。

「ABCしか知らない初心者でも本書を読み通しさえすればPragmatism やSartor Resartusレベルの原書を読める」(本書の帯が示唆している内容)はやはりミスリーディングだと思います。これって

「ABCしか知らない初心者でも辞書と文法書さえあればPragmatism やSartor Resartusを読める」

と言っているのと同じで説得力に欠ける、というのが僕の結論です。なお、現段階においても、ABCしか知らない初心者または英語の初心者が、本書を読んで「なるほど原書がよめるようになりました!」という感想は見当たらない。いまだに上級者と思われる人たちによる自分目線での評価しかない。繰り返しになるが、その事実が本書は初心者向けではないことの証明ではないかと思う。

3.総合評価
①本書を『基本文法から学び直す英語リーディング教本(上級者向け)』として読んだ場合の評価:5段階評価の4。
本書の面白さについては繰り返さない。5にしない理由は、著者独特の文法用語や文法事項の依って立つがわからない箇所が見受けられ、根拠が希薄に感じられたから。参照できる文法書をいくつか提示してほしかった。

②本書を初心者向けとして読んだ場合の評価:5段階評価の1。
問題点については繰り返さない。初級者には時間の無駄遣いになる可能性が高いと思う。2600円を出すならもっと分かりやすい、とっつき安い本があるはず。もちろん、例外的な天才はいるかもしれない。しかしそれは本書の帯の示唆とは異なるし、そのような天才であれば、わざわざ本書を読まなくても英語があっという間にできるようになるはず。

③以上を踏まえて、総合評価は5段階評価の3。

以上、あくまでも一読者としての感想です。