金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「カメラのレンズは過酷なほど正直に被写体を映し出す」:出会った言葉(昨年~4年前の今日、FBお友だち限り投稿への書き込みより)(98)

(1)昨年の今日
カメラのレンズは過酷なほど正直に被写体を映し出す。愚鈍な性は愚鈍にしか写らないから恐ろしい。不美人を美人に写すことはできても、バカをリコウに写すことはできないのである。
高峰秀子著『わたしの渡世日記(下)』(新潮文庫)p130)
*『わたしの渡世日記』は、身内の恥まで含めてよくぞここまで自分をさらけ出せたなあと感動する名エッセイで、同時に彼女(昭和元年生まれ)の交遊録がそのまま日本の戦前から戦中・戦後の映画/文学の裏面史をなぞっている(黒澤明市川崑志賀直哉谷崎潤一郎等の素顔が描かれる)ような「深い」本だと思います。超お勧め。「文は人を表す」とか「カメラは人の本質を見抜く」みたいな一見常識とも言える物言いも、彼女にかかるとグッと本質に迫る気がするから不思議だ。学校をまともに出ていないのにここまでの文章を書けるとはさすが。 

(2)3年前の今日
雑誌のページ数にして二段組みわずか六ページ、その中にそれぞれ一つの人生模様を繰り広げて見せ、場面の転換、まのとりかた、人物描写、小道具への目配り、心憎いばかりのわざに感服した。これだけの枚数では、余計なことは書けもしないが、書かないうまさというものがあると思う。
阿川弘之「精神の律動――第83回直木賞選評より『向田邦子を読む』

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(3)4年前の今日
私が思う「貧しい人」とは、限りない欲を持ち、いくらあっても満足しない人のことだ
ホセ・ムヒカウルグアイ前大統領)
(2017年10月24日付朝日新聞「折々のことば」より)

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