金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「私の履歴書」雑感

日本経済新聞の最終面に毎日連載されている「私の履歴書」って、そこに書けるだけで既に大変な名誉なのね。世の中で人もうらやむような大成功を収めた人の自叙伝なわけですよ。

だったら己の失敗談や学んだことをどんどん書いた方が読んでいる人の参考になると思う。先月の山本耀司さんや吉野彰さんのように。吉野さんなんか、ここまでの話を読む限り、旭化成に入ってからの8年間は失敗しかしていないものね。でもそこで落ち込んだ時に会社がどう対応してくれたとか、自分は何を考えどう対処したのか、が読む者に感動を呼ぶのだと思う。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。野村克也監督が有名にした言葉はやはり真理で、極端な話、ある人の「私の履歴書」がすべて「私の失敗史」だったら、そうだとしても、いやそうであればこそ 読者の圧倒的支持を受けるのではないかな。

ところが、そういうことがわからず晩節を台無しにする、というか最後の最後に正体を見せて赤っ恥をかくバカがいるんだなこれが。大体その手の人に共通するのは①有名大学の出身、②官民を問わずサラリーマンである、③仕事の中での大失敗や恥をかいたエピソードがほとんど出てこない、④後半になるほど有名人との記念写真(国会議員候補予定者による握手写真のような類いの写真)が多くなる、という点。

こういう方々はきっと、何かの間違いで私の履歴書を書く運命になったことを自らの実力とド勘違いされているのだろう。もちろん、「運も実力のうち」だが、読者は執筆者の運の良さからは何も得るものはない。

自分の人生から何も学んでこなかったに違いない。