(1)昨年の今日
(是枝)僕が入った頃はみんなが佐藤さん(佐藤利明カメラマン)のことを「師匠」と呼んでいました。現場でディレクターが「佐藤さん、きれいだからこの景色撮ってください」と言うと、「きれいだったら見とけばいいじゃないか」と撮ってくれなかったという話をよく聞きました。
(「今野勉X是枝裕和 ご案内:宮本信子―伊丹十三とテレビ」『総特集 是枝裕和―またここから始まる』(河出書房新社)p80)
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*引用文は是枝さんがテレビマン・ユニオンに入った頃の伊丹十三さんをめぐる思い出を語った中で出てきた話。これを読んで、たしか長男が小学低学年の頃の運動会を思い出した。
50メートル走が始まるぞってゴール前まで走り、カメラを準備していたら、うちの相方から「お父さん、今この瞬間は『今』しかないんだよ。カメラなんか覗いちゃ駄目。自分の目でしっかり見なさい!!!」と怒鳴られたのだ。この一言だけでも僕は妻を大いに尊敬する理由があると思っております。もっとも、覚えているのはその妻の言葉と声と勢いだけで、肝心の子どもが走っている映像はほとんど頭に残っていないんですが。
(2)2年前の今日
「大切なのは外見じゃない、内面だ」とよくいいますよね、そうするとたいていみんな心のことだと思う。違う、内蔵だと。 摩夜峰央(漫画家)
(「折々のことば」 本日付朝日新聞)
*「折々のことば」の編者、鷲田清一さんは、この言葉を引き、摩夜さんがそう言ったのは無理がたたって肝臓を壊したことがあるから、と説明した上で、次のように解釈を加える。「……ここは深読みしたい。 人にはそれぞれの<私>よりも古くて不可解な、生きものとしての内臓感覚のようなものがあって、それが人を創作へと突き動かしていると」。
Teal Journey Campusで『ティール組織』の著者ラルーさんが話されていた内容にシンクロしていると思った。ガッツ・フィーリング(gut feeling)。ラルーさんの発言のうち「頭はちょっとしか役に立たない。何をすべきか、そうでないかは体が決めてくれる。直感⇒体⇒ハート⇒頭。」のことだと。そしてラルーさんは「自分の身体の言うことに耳を傾けろ」とおっしゃった。
(3)3年前の今日
古来、官僚は人事権者にこびるものだ。仮に国家公務員の幹部人事を一元管理する内閣人事局を廃止しても、こびを売る相手が変わるだけ。問題の本質は志を捨て、こびを売る官僚が増えていることであり、筋を通す官僚を懐深く評価する政治家の度量の有無だ」
(「政と官 私の意見 筋通す官僚評価を」 斎藤健農相 本日付日経新聞)
(4)4年前の今日
古本屋という仕事は、自分の知らないものを「これは何だろう」と思うことからはじまるものだが、知っている領分がいくらか拡がってくると、その外側にだんだん無頓着になる。(『古本の時間』内堀弘 (晶文社)p186)