金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

大学生向けに産業翻訳の入門編を講じる

上智大学文学部のTranslation Theoryという科目の非常勤講師の一員として半年間で講師6名×12回のうちの2回を担当した。担当は「産業翻訳イントロダクション」。6月10日と17日の2回、100分授業×2回(私以外は文芸または字幕翻訳)。同校が産業翻訳者を講師にするのは初めてらしい。産業翻訳をテーマに、2回目の授業の最後に100点満点の試験または課題を出してほしいとの要請以外は何の制約もなし。トータル200分を自由に組み立てて構わないとのことだった。

1回目(本日):「産業翻訳イントロダクション」
たまたま4月に『産業飜訳パーフェクトガイド』が出たこともあり、「僕はイカロス出版さんの回し者ではありませんが」を枕詞に同書をベースに産業翻訳全般を紹介した後、僕の専門である金融英語へと内容を絞って行き、その後「経済英語の学び方」ということで『金融英語の基礎と応用』の中から英文と訳文を紹介して行った。正確に言うと、5年ほど前に金融翻訳者のいくらさんと一緒にやったセミナーの簡易版を行った(覚えておられる方もいらっしゃるかも)。

2回目(17日):「新型コロナウイルスと金融翻訳」
昨年8月に会議通訳者協会様向けに行った講演内容を、翻訳や訳語に重点を置いて短くして基本的な用語や概念を整理し、その後「新型コロナウイルスの報道を追う」をテーマに、同じ日に起きた米国市場の動きと周辺情報を英文記事はロイター(一部はFT)、日本文記事は日経の記事を取り上げて比較して表現に注目して行くという構成にしました。

で、実はコロナ禍で僕たちの授業は全部オンライン、いや録画→ダウンロード方式となって、授業はすべて録画済み。テキストも2回分、5月中に納品した。ZoomやらYouTubeで騒いでいたのはこの件でした(下のリンク先参照)。

学生は10日から1回目の録画を見ることができ、2回目は17日。1週間後までに課題を提出してもらい採点/評価するまでが仕事です。現在(2021年7月14日)は、学生さんたちから提出してもらった答案を採点、講評を書いている最中。一人の採点と講評に30~40分。課題を提出した学生は20名なのでこの作業に10時間ぐらいかかる勘定になる(大学側からは、採点結果だけ提出すればよいと言われているが、学生の答案を眺めているうちに何か返さないと気が済まなくなったのである)。

課題で工夫した点。
①1回目の授業の最後に「2回目の授業で課題を出します」と予告。
③課題文は作成しない。講義第2回のテキスト冒頭に「問題文はありません。授業内で発表するのでよく聞いて下さい」と書いた。
④あらかじめ問題を10問ほど作成しておいた。
⑤2回目の授業中に適当な間隔を置いてタイマーを設定し、授業をしながらタイマーがなると「それでは話し中ですが、今から問題3を読み上げます」といった調子で用意しておいた問題文を1回だけ読む。「録画ですから、聞き逃したら巻き戻して聞いてください」。
⑥問題はすべて1回目の授業に関するもので、授業さえまじめに聞いていれば、テキストを見直してなんなく解ける問題(クイズみたいなもの)ばかり。
⑦最終問題は授業の感想として、100点満点のうち5点を配点した
⑧以上の方法により、学生は1回目の授業も、2回目の授業も最初から最後まで一通り見なければならず、しかも点数を少しでも上げるために感想を書けば得点できるようにした。

金融翻訳者をやっているとどうしても守秘義務が頭から離れずこの件も外部に話してはいけないと思っていたのですが、「貴校の講師をしていることを外部に漏らしてもいいのか?」と尋ねたところ、「どうぞどうぞご発表ください」とのことでしたのでここに書くことにしました。

良い経験をさせてもらいました。

関係者の皆様に感謝します。

ありがとうございました。

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