金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

JTF 機械翻訳セミナー参加報告を読んで(2021年4月)

非常に面白かった。勝田さよさんのまとめはいつも大変うまく、セミナーの雰囲気も何となく味わえます(僕はセミナーは拝見していません)。

2点気になった。

①AIは、僕らの想像力をはるかに超えるスピードで進化してきた。

MTはどうか?

「可能性は無限大だが、個人的には2014年頃と比較して成長スピードが鈍ってきているように感じる」とは中澤さんの実感だろうが、それは一時的な感想かもしれない。この30年、いや10年で実現してきた信じられないほどのAIの発達スピードを考えると、そんなに悠長に構えていられるのだろうか?

1996年初め、当時私の勤めていた某社某部の会議室で外部講師を招いて開かれた勉強会のテーマは「電子メールは時空を超える」。

当時、携帯電話は6名の課に1台。外出する人間が「携帯持っていきまーす」と言って出かけたものである。インターネットの黎明期で、電話回線で当社のホームページの1ページ目、社長がにっこり笑ってこちらを向いている牧歌的なページが映るのに確か2分ぐらいかかっていたような気がする。

今からわずか25年前の事実だ。

機械翻訳について考える時には、せめてこういうタイムスパン(スピード感)を考えた方がよいような気がする。

②MTを人間がPEした翻訳の責任は誰がとるのか?
今は、例えば僕が翻訳し、Aさんが校閲をしたとして、できあがった翻訳の責任は僕になる。では機械が翻訳し、人間がPEをした翻訳に大きな問題があった場合、その責任は誰が負うのか?

僕が飜訳会社なら、機械翻訳したもののPEを依頼するのではなくて、翻訳を依頼し、相応の対価を支払った上で「この機械翻訳ソフトを使っても使わなくても構いません。あなたの責任で翻訳し納品して下さい」と言うな。

直接僕には関係ない(僕はPEには何の関心もないし、やる気も無い)が、頭の体操的にそう思った。

 

JTFセミナー「機械翻訳とは何か? どこから来て、どこへいくのか?」―淘汰と変化は起こるのか | 屋根裏通信