金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「コロン(:)」と「セミコロン(;)」(翻訳ストレッチの教材から)(2021年4月)

コロン(:)について、いくつかの著者の説明をまとめてみた。

(1)佐々木高政さん
(a)叙述が読者に「してまたそれは?」と思わせ、その解明を求めて心の首を前に伸ばさせる類いのものであれば、続く(b)との仕切りにcolon(:)を使う。……
したがって次の分のto read a bookの次のcommaはcolonにしてほしかった。

There is only one way to read a book, to give yourself up to it, alone, without instruction as to what you should be finding in it, without necessity of making it into a series of points, but enjoying it, coming to know in personal terms what is in what is in the mind of the writer. (意味:本の読み方は一つしかない。本に入れ揚げることだ。ひとりぼっちで、その中に何を見出して行くべきかについてあらかじめ指図を受けたり、その内容を一連の要点に作り替えるという必要もなう、それを愉しむこと。著者の心のウチにあるものを肌身でさだかに知るに至ることなのである。)
(『英文解釈考』(金子書房)pp47-48)

(2)柴田元幸さん
英語における「:」(コロン)と「;」(セミコロン)の基本的な違いは覚えておいてくださいね。……それ(セミコロン)に対してコロンというのは、「すなわち」「具体的には」というはっきりした意味があります。……の「:」で読み手は一瞬、息を止めるんですね。話の流れが一瞬止まって、「どうなるんだろう」と思う。ドラマチックなことが明かされるような雰囲気がある……。(『翻訳教室』(新書館)pp209-210)

(3)柴田耕太郎さん
既に述べられた事柄を、同格/細目/補足などの意味で以下に述べる(『翻訳力錬成テキストブック』p28など、何度も出てくる)。

(4) 多田正行さん

コロン[:]は理由を表す。
例文:Hariett pointed himeout, else I should never have recognized him: a quiet, shy, modest man, as diferent as one could imagine from the singer I had seen so often passing my farm.(ハリエットが彼だと行って言って私の注意を引いてくれたのだが、もしそうでなかったら、彼だということが私には解らずじまいだったことだろう。その時に見かけたのは内気でつつましい男であって、かつて私の農園を歌いながらあんなにもしばしば通っていくのを見かけていた姿からは、まるで想像もつかぬほどの全くの別人だった。)(『思考訓練としての英文解釈(1)』(育文社)p69)

(5)原仙作(中原道喜)さん

Colon(:)は説明や定義を加える場合の句読点。

例文:The European Traveller in America-at least if I may judge by myself - is struck by two peculiarities: first the extreme similarity of outlook in all parts of the United States, and secondly the passionate desire of each locality to prove that it is peculiar and diferent from every other. (アメリカを旅行するヨーロッパ人は――少なくとも私ひとりで判断してよいとすれば――二つの特異な点に気づく。第一に、アメリカのすべての地方の眺めが極端に類似していることであり、第二に各地方の人たちが、自分たちの地域は特異なものであって、ほかのすべての地域とは異なっていることを証明しようという熱烈な意欲をもっていることである)。(英文標準問題精講(旺文社)pp91-101)

なおセミコロンについては、

「ここからわかるように、セミコロンというのは、カンマとピリオドの間くらいだと思えばいいですね。ちょっと一呼吸空ける感じ」(柴田元幸さん。『翻訳教室』pp209-210)。

「前後の説を等位で結ぶ、比較・対象・敷衍のしるし」(柴田耕太郎さん、『翻訳力錬成テキストブック』(日外アソシエーツ)p28など、何度も出てくる)

セミコロンについて一番分かりにくかったのが佐々木高政さんで、「二つ(以上)の平衡した叙述がperiod(.)で区切るにはあまりにも密接しているし、comma(,)で分けるには重すぎるときには、それを合わせたsemi-colon(;)を使う(『英文解釈考』(金子書房)p47)。ただし佐々木さんの説明は、R.Graves & A. Hodge著のThe Readr over Your Shoulderの定義に従っています。

以上まとめると、セミコロンは比較的簡単で、「カンマとピリオドの間くらいでちょっと一呼吸空ける感じ。意味的には比較・対象・敷衍」てな感じでしょうか。

コロンについては、僕には佐々木さんの「してまたそれは?」と柴田元幸さんの「話の流れが一瞬止まって、『どうなるんだろう』と思う」という説明がストンと腑に落ちました。

(1)または(2)の感覚さえしっかり踏まえておけば、(3)~(5)の機能を覚えなくてもわかると思います。