金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「日経平均、30年6カ月ぶりの高値」とは

「株価 終値でも3万円超え」 「いわゆる「バブル景気」のさなかの1990年8月以来、30年6か月ぶりの高値です」とのことだが、一応手元の資料を見てみると、1990年8月というのは、89年12月に3万8000円超えの史上最高値をつけた後、リバウンドを伴いながら下げ局面に入っていた時期であることがわかる。

1990年7月の終値は31,035円。その後8月は25,978円、9月は20,983円、10月は25,194円と上げ下げを繰り返し、1992年3月に19,345円(以上すべて月末終値ベース)と、「(下げても)ま~だまだ。いつか戻るだろう」と思われながら株価上昇を信じていた下げ局面の「3万円」。

では上げ局面で3万円を抜けたのはいつか?あくまでも月末終値ベースですが、1988年12月、つまり史上最高値をつける1年前に30,159円を記録している。
したがって「日経平均が上げて3万円を超えた」は32年2カ月ぶりということになる。

「〇〇年ぶり」という表現を見たときには、どういう状況とどういう状況を比較しているのかをよく確認することが大切だと思う。

ちなみに、1990年8月31日の東証株価指数(TOPIX)の終値は1,973.97。15日の終値は1951.65だから、一部銘柄だけではなくて銘柄全体も1990年8月の水準に近づいていることがわかる(なおTOPIXの史上最高値は1989年12月18日の2884.80。日経平均に10日ほど先んじていた)

(余談:当時日本では「バブル」という言葉はほとんど聞かれなかった。私は当時(1987~88年)に「今はバブルか?」という説をアメリカ人経済学者の講演で聞いたことをハッキリ覚えているが、「バブルではない。日経平均5万円時代が来る」と本気で信じているオメデタイ証券マンであった)。

以上ご参考まで。なお、データは検索して引っ張ってきたものなので、裏はご自身で確認してね。