金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

病院の待合室で(2021年2月)

昨日の朝、ある総合病院の待合室でのこと。本を読んでいたら、
「今日は13日だったかな」という声が聞こえた。

しばらく返事がない。誰か付き添いの人でもいないかと周りを見たがよくわからない。するとまた
「おい、今日は13日だったかな」。通路を隔てて右隣に座っているおじいさんだった

すると、すぐ後ろに座っている奥様らしい人が自分の腕時計を黙って差し出しておじいさんに見せた。ただし何も言わない。差し出がましいとは思ったが
「今日は12日ですよ」と声をかけた。

おじいさんは無愛想な表情で僕を見つめたが、後ろの女性がニッコリ僕に頭を下げて
「ありがとうございます・・・でも、今この人練習しているんです」「え」
「あえて教えないで、自分で考えさせているんです」
それで初めて状況を理解した僕は、ご主人と奥様に
「これは大変失礼いたしました」と頭を下げました。おじいさんの表情は変わらなかったが、奥様は優しそうに僕に会釈をされた。マスク越しでわかるはずはないのだが、ニッコリほほえんでいるように見えた。

そしてしばらくするとまた
「今日は金曜日だよな。ほれ、そこにFridayと書いてある・・・13日だったかな」
「何日かしらねぇ。考えてみて」
「う~ん、12日だったかな」「そうね」
という会話が何度か繰り返されていました。

そこに私が出会った光景だけを見て簡単に判断してはいけないことだとは思う。それはわかっている。でもわかった上で、う~ん、いい夫婦だなと思いました。