金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

最高の「クラス」は優れた教材の熟読と暗記

最近、翻訳ストレッチで英作文の時間を毎日10分取るようになって思い浮かんだ仮説。「限られた時間(たとえば毎日30分)で会話力(英作文力)をつけるには、どんな英語クラスや会話レッスンを受けるよりもよくできた教科書を覚える方が効率がよく、はるかに安上がりである」。

今から25年ほど前、スイスチューリッヒに駐在していたT銀行のMさんは、(ドイツ語圏の)スイス人よりもドイツ語が上手いという評判だった。スイスに赴任するまでドイツ語には無縁だったというMさんが東京に帰ることになり、確かその送別会の席で、「どうしてそんなにドイツ語が得意になられたのですか?」と尋ねたら「これだけです」と1冊のドイツ語教本(書名は忘れました)を鞄から取り出して見せてくれた。「これを全部覚えました。完璧に」。あの時の言葉をここ数年かみしめています。

(以下引用)
言語コミュニケーションにおいては、「読む」「聞く」「書く」「話す」という四つの力が要求される。そのうち読む力が基本になるということが意外と理解されていない。大人になってから外国語を習得する状況を考えてみよう。読む力の範囲内で残り三つの力が発揮されるのである。(ここまで)
松岡正剛佐藤優著『読む力 - 現代の羅針盤となる150冊』(中公新書ラクレ)p234)

引用文はは読み終わったばかりの本から。要はまず「読み」そして「書き」がまず大事だと言っている。著者の一人佐藤さんが「あとがき」で「そのうち読む力が基本になるということが意外と理解されていない」というのは、今の学校教育も巷の英語教室も、「話す」「聞く」に重点を置いているからだ。読み書きは地味な努力で一見つまらない努力だが、それなしでは本当の「話す力」も「聞(聴)く力」もつかないというご意見は僕もそうだと思います。