金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

空いていたポケット

今朝のこと。

散歩する僕の50メートルぐらい前をお婆さんが歩いていた。歩き方や髪の毛の感じから80歳ぐらいじゃないかな。ちょっと頼りない足取りで小さなナップザックを背負っていた。

ふと見ると、サブポケット(後ろの小さいポケット)のチャックが空いているように見えた。「あれ?」っと思ったが見間違いかもしれない。声を掛けようかなと思っているうちにお婆さんはバス停の所で立ち止まった。私が近づいた時には、彼女の後ろにはもう5~6人ぐらい並んでいたんじゃないかな。

でまあ、僕はそのお婆さんにやや近づいたわけよ。すると確かにナップザックのポケットが空いていて、しかも財布らしきものが見えている!(ただ、紐か何かでナップザックに結びつけられているような感じ)。

僕は意を決して近づいて、お婆さんの肩をちょんちょんと叩き、「あの、バッグのポケット空いてますよ」と言ったのだ。

するとそのお婆さん、何かおびえたような眼をして僕の方を見ると、そのまま前に向き直ったのだ。僕のしぐさと声を聞いて、バス停に並んでいた人が一斉に僕を見る(と僕は思った)。

しようがないので、「お気を付けてくさだいね」とだけ言って列を離れた。自分の人相が良くないのは分かっているので、あまり長々と説明するのもどうかと思った。注目もされていたし。しまったマスクをしていなかったとその時に気がついた(一人で散歩の時はマスクをしない)。

帰宅して妻に話すと「きっと聞こえなかったのよ。耳元でささやいてあげればよかったんじゃない?」「マスクをしてなかったんだ」「それじゃしようがないわね~」

後ろにいたおっさんは絶対気づいていたはずなので、一言言ってあげれば良いのに、なんで知らんぷりしてるんだろう、と憤りつつも、こっちは親切心のつもりだったが何か変な怯えを与えたような気もするし、かと言って悪いことしているわけでなし、ああいう光景を見たら一言かけないと気が済まない性分なのでまたそうするとは思うけれども、今の世知辛い世の中、親切心で声をかけるにも縦横斜めをよく見て慎重にならねばと思った、ちょっと複雑な気分な朝でした。