金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

人の居場所

出会った言葉:
人から居場所を奪うことは簡単である。だが、失われた居場所は決して人から与えられて得られるわけではない。いかに理不尽に居場所を奪われた人であっても、その居場所は自分の手で取り戻さなくてはならないのである。
(「阪神大震災は人々の心をどう変えたか」『心の傷を癒やすということ』p322、安克昌著、作品社)

安さんは空間的な居場所と心理的居場所の話をしており、引用文は心理的な居場所についてのコメント。その直前(同じページ)に

心理的な居場所とは、他者から受け入れられ、しかも他者から侵害されず、そこにいることが安全に感じられるような環境である。安全な対人関係があって、ある集団や地域社会(コミュニティ)の中で自分の位置が確保されているということである。

と言っている。安さんは、詰まるところ他人による「心のケア」には限界があって、あるところから先は本人の努力に任せるしかないと(他の箇所で)言っている。周囲はその環境をある程度つくることができるが、そこに自分の場所を確保するのはあくまでも本人なのだ、と。

実に、実に難しい問題なのだけれど、被災地にコミュニティを復興していく際には、この居場所の問題を「考えていかなければならない」と安さんは主張する。あきらめてはいけないのだ、と。