金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

いわゆる「写経」(原文と訳文の手書きでの書き写し)について(2)

(5)毎回、最低でも1文(原文と訳文)の書き写しが終わるまでは止めない
「翻訳ストレッチ」では一つの活動を5分単位にしていますので、この書き写しも5分で一区切りなのですが、実際には文章が長くて、全部書き写し終わらないうちに(場合によっては、原文すら書き終わらないうちに)5分経ってしまうことがあります。その時はどうするか?原則として、1文の原文と訳文が書き終わるまで続けます。2文目の途中だったら、その原文と訳文を書き終わるまで続けます。結果として10分ぐらいになることもあります。

(6)写した後にすること
自分が書き写した原文と訳文を1回(か2回)音読します。そこから先は対訳を検討する場合と概ね同じなのですが、何しろ原文も訳文も自分で手書きしているので、結構細かい所に気がつきます。なぜこのofとかbeがこう訳してあるのか、なぜ訳文のこの助詞が「が」なのか。「しかし」ではなくて「けれども」なのか、とかいったことです。ノートへの手書きなので、英語で書き写し読んだ時にはパッと頭に入らなかった箇所や、日本語を書き写しているときに頭がついていかなかった箇所は、日本語訳を書き写す時に赤字で書いたり、丸で囲ったり・・・で、重要だな、と思った箇所は余白に書き込みます。ノートへの書き込みなので自由に余白を使えます(試しに見開き1ページ分の写真を撮りましたのでご参考までご覧下さい(字が汚くてスミマセン)。何しろ細かい所に気がつきます。それが書き写しの最大のメリットだと思う。

(7)書き写しのデメリット
毎日5分、せいぜい1文なので、その文章の流れ(コンテキスト)を忘れがちになります。だいたい、毎回前日分をさらっと復習してからその日の書き写しに入りますが、時たま、見開きを一覧してざーっと読んでいます。訳書がまだ22ページなので大学ノートmm×30行×30枚)の半分まで来たので、今度はもっと前まで戻ってゆっくり読み直す(余白のメモも含め)時間を取ろうかなと思っています。自分で書き込んでいるので、手書きのメモは結構頭に残っています。

余白に書くと言うことは、英語が難しかったか、訳文に自分の頭が追いつかなかったか、自分がその訳文を思いつかなかった箇所です。しかもそれは副詞や前置詞の表現であることがすくなくない。したがって、結構似たような表現にぶつかった時にこのノートに戻ることがあります。コンテキストが違って使えないこともありますし、合うとうまくフィットすることもあります。

このように1文(というか、原文と訳文の2文ですね)から色々なことを学べます。私が「書き写しに即効性が(音読に比べて)高い」とSNSに呟いたのはそういう意味です。

(8)1冊を続けることのメリット
毎日(というか、今の僕のスケジュールでは1日置き)続けると内容が「つながって」行きます。5分は短くて、毎回さらっと前日分ぐらいは見るし、随時復習の時間をとっています(その場合も5分ですから、ノートを眺めるだけです書き写しはできないことが多いです)。そうするとコンテキストがはっきりしてくるので新たな発見があります。

勉強になる表現を見つけるとノートに取る方は多いと思います。僕も別にノートをつくってそうしていますが、どうしてもそれは「単発の表現集」となり、結局「書いて終わり」になり、あとから見返すと(よほど長く書き写しておかないと)文脈が読めずに意味がわからなくなっている、ということはないでしょうか?もちろん書く作業そのものに意味はあるのですが、1冊のノートをゆっくり書き続けることによる「つながる」メリットは大きいと思います。

(9)本当は写経も毎日やりたい
現在は1日置きですが、本当は毎日やりたいと考えています。この1年ほどほぼ固定化してきた翻訳ストレッチの構成を少し組み換えて毎日ベースにしたい。

・・・と、ここまでが手書き写しの実践紹介です。次回は音読(特に手書きとの比較)についてご紹介します。(続く)

(後記)現在は毎日10分間取り組んでいますので、上に述べた問題点のいくつかは解消されています(2023年1月30日現在)

いわゆる「写経」(原文と訳文の手書きでの書き写し)について(3)(最終回) - 金融翻訳者の日記

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