金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

映画「真実」(主演:カトリーヌ・ドヌーブ、監督:是枝裕和)を観に行く(2019年11月)

出会った言葉:
「……魔法はないんです。地道な作業です」 映画監督 是枝裕和さん
(「名俳優×名監督:言葉の壁を越え ― たくさん話し、こまめに手紙。魔法はない 是枝監督」2019年10月11日付朝日新聞)。

昨日は、ほぼ3カ月ぶりのお休みを取って「真実」を見にいった。ジワジワと感動が広がってくる素晴らしい映画だと思った。見終わった時の最初の感想は、すべての内容をもう一度頭の中で整理して「もう一度見たい」。

当初30分ぐらいはフランス語を耳にしながら(つまり音に全く頼れずに)字幕を見ることに追われて、 ただ、とても綺麗な映像と高尚な雰囲気にちょっと飲まれちゃったようで、内容を把握するのに時間がかかった。「NHKの特別番組見ていたのに、わからなかったの?」と相方からは呆れられました。妻の感想は「今まで見た是枝監督の映画の中で一番感動した」。

冒頭の引用は、カトリーヌ・ドヌーブさんが撮影現場でとてもリラックスしている様に見えた。どんな魔法をつかわれたのですか?とのインタビューアーの質問に対する是枝監督のお答え。NHKの番組(BS1スペシャル「是枝裕和×運命の女優たち~フランスで挑んだ1年の記録~」)でもそうでしたが、是枝さんは文字通り控えめに、地道に、コツコツと努力される方だと思います。

「『これは俺の作品だ、だから俺がやるとおりやれ』というのは、作品よりも自分が可愛い人が言う台詞。僕はそんな唾棄すべきことは言わない」という趣旨のことをおっしゃっていましたが、妻が取っておいた新聞の切り抜きを昨日見て改めて作品だけでなく監督の人柄と経営者としての姿勢が素晴らしいと思った。

話は変わりますが、一昨日の夜は、世間から「ティール組織」と呼ばれている企業経営者5名の方との飲み会にお誘いいただいた。業種も違えば社員数も異なる皆さんに共通していたのは「物静か」「(どちらかというと)無口)。いかに社員の皆さんに気持ちよく仕事をしてもらうかの環境作りをじっくりと考えて、ちょっとお手伝いするみたいな。是枝監督的だな、と昨日映画を見て、帰宅して引用の新聞記事を読んで、改めて思った次第。おそらく、一番大声で「俺が、俺が」的おしゃべりをしていたのは、『ティール組織』訳者の僕だったのである(恥)。

最後に、この映画の英語タイトルはThe Truth。いまは、「ポスト・トゥルースポスト真実)」の時代。「何が真実かを決めるのは、自分自身だよ、自分の頭でじっくり考えてください」という是枝監督なりの「政治的な」メッセージだったかもしれないと思った。

できれば、事前学習してから見にいくと感動が深まると思います。