金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

生まれて初めて席を譲られた話

一昨日のこと。叔母の通夜に参列した後だから、午後9時くらいだったかな。

東西線日本橋駅でかなり混み合っている電車に乗り込み、通路の奥まで動いて荷物を棚に乗せようかなと思ってゴソゴソやっていたら「どうぞ」との声。年の頃30ぐらいだろうか、スポーツマンタイプの男性が立ち上がった。

「あれ?」と思って私は自分の隣か後ろに妊婦かご老人でもいないかと周りを見渡しましたよ。でもそれらしい人は見当たらない。あれあれ?と思ってその若者を再び見ると、私の目を見て「どうぞ、お座り下さい」

俺様のことだったんだ――――――――!

一瞬の躊躇の後、「ありがとうございます」と言って座ったんだが、いや~あのときの気持ちは何とも一言では形容できないですねえ。

「そんなことをしてたらしかられますよ」と子どもをたしなめるお母さんから初めて「おじちゃん」と呼ばれたのは大学3年生の時だった。

電話営業でお客様のところに挨拶に行った際、「あら、電話の声より若いじゃない・・・(一瞬喜んだ)・・・40代?」と言われてその夜やけ酒を飲んだのは24歳の時である。

一昨日のショックはそれ以上でした。いつか来る、その来るべき時が僕の想定していたよりも10年早く来た感じ・・・。

その時の私の身なりは、喪服の上にコート、帽子をかぶり、マスクをしていました。ということはこの若者は私の立ち居振る舞いや姿勢を見て僕に席を譲ろうと思ったのだろう。

まず自分を重ねたのは、1997年に試合途中で交代を告げられた時に「え?おれ?おれ?」と答えた三浦知良選手。あ、あのときの三浦さんはこういう気持ちだったんだ!と(不遜にも)思いました。

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/2542962.html

次に思い出したのは、先日目にした朝日新聞の「声」欄。お年寄りに席を譲ろうとした中学生がそのご老人から怒鳴られて本当につらかったという話が話題になったのだが(その投稿に対する賛否両論が特集されていた)、私は自分が席を譲られて初めて、その時に怒鳴ったご老人の気持ちが少し分かった気がした。ただ、目の前の若者が親切心で席を譲ってくれたのは間違いなく、そう思えばこそ「俺はまだそんな年寄りじゃねーぞ!」という反発心が沸いたとしても、それを彼にぶつけるのは筋違い、失礼だ。僕の心の中では感謝の気持ちの方が強かった。

西葛西駅についてそろそろ降りようとすると、その若者には降りる気配がない。立ち上がりざま「ご親切にありがとうございました」と頭を下げて席を立った。

2日経ってやっと立ち直ったところ。今日から気持ちを新たに頑張ります(何を?)