金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

逆茂木型の文 ー翻訳ストレッチの教材から(2016年10月)

(以下引用:ただし、適当に間引いています)
5.2 文の構造 ― 逆茂木型の文
最初に次の例文をご覧いただきたい。
「・・・直流電気抵抗の消失をはじめとする特異な性質を示す超伝導状態は、いろいろな運動量をもって勝手な運動をしている伝導電子が、ある臨界温度Tcで、そのほとんどがある特定の運動量pをもった一つの量子状態におちこむことによって実現する。電子自身は、一つの量子状態を一個以上占有できないというパウリの禁制原理にしたがうので、このような状態をとることはできない。しかし・・・」
(中略)
裏返して言えば、読者に逆茂木型の抵抗を感じさせないためには、次のような心得が必要であろう。
(a) 一つの文の中には二つ以上の前置修飾語は書き込まない。
(b) 修飾節の中の言葉には修飾節をつけない。
(c) 文または節は、なるたけ前とのつながりを浮き立たせるような言葉で書き始める。
(a)、(b)、(c)を念頭において、上記の逆茂木型の例文を書き直してみよう。それには、長すぎる文を分割する、また前置修飾語が修飾している言葉を前に出す、等の手法が役に立つ。
・・・超伝導状態では、直流電気抵抗がなくなるほか、いろいろと特異な性質が現れる。超伝導は、特定の物質が固有の臨界温度Tc以下に冷却されるときに起こる:それまでの勝手な熱運動をしていた伝導電子が、ほとんどすべて、特定の運動量pをもつ一つの量子状態におちこんで超伝導がはじまるのである。もっとも、パウリの原理によって、二つ以上の電子が一つの量子状態にはいることは禁じられているが、・・・
(ここまで)『理科系の作文技術』(木下是推著、中公新書)pp78-81

村井章子さんが本書を「絶対お奨めです」とおっしゃっていた意味がよくわかりました。

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